16人が本棚に入れています
本棚に追加
いじめ
金髪の少年と、その取り巻きがニヤニヤ笑う。
「今日はすんげーイライラしてんだよな」
金髪の少年、坂倉が僕の腹を蹴った。
「っ!!」
僕は腹を押さえ悶絶する。
痛い。
でも、反論したらまたやられる。
我慢した方が良いんだ。
あぁ、僕はいつもそうだったな。
僕は自嘲気味に笑う。
「何笑ってんだよ」
坂倉の目は狂気的で恐怖を覚えた。
僕は壁に投げつけられ、勢いよく背中を打ちつけた。
「いった……」
もう耐えられない。
やるならいっそ僕を殺してくれ。
そう思っていると
「何やってるの!!」
きらりだった。
なぜここに!?
ここは男子トイレだぞ。
「凄い音がしたから見にきたけど、何やってるの?」
きらりは坂倉たちを睨みつけた。
「お前、隣のクラスの星野きらりだな。
まさかこいつの彼女か?」
「まさか!」
坂倉たちがゲラゲラ笑う。
「わたしは、宙人の彼女よ!!」
トイレにきらりの声が響いた。
「は?」
呆然とする坂倉。
こんな地味なやつに美人な彼女がいるなんて
信じられないよな。
「嘘だろ……?」
「本当よ。なんなら今ここで宙人と
キスしてあげても良いけど?」
は?! 何言ってんだ!
「……くそっ!! どうしてお前なんかが!!」
坂倉は僕をギロリと睨み、きらりに駆け寄って
彼女を強く抱きしめた。
恐らく僕のような地味な男子が美少女と
付き合っていることが許せないのだろう。
「俺がお前の彼女を奪ってやるっ!!」
「何すんのっ!!」
嫌がるきらり。
しまった。
「きらり!」
きらりは制服を脱がされそうになっている。
まずい、このままだと!
僕はきらりを助けようと立ち上がるが
取り巻きに押さえつけられる。
「じっとしてろよ」
「やめろ! 離せ!」
もうダメだと絶望したそのとき
「やめなさいよ!!」
坂倉は勢いよく地面に叩きつけられた。
「え?」
何が起きたんだ?
きらりが肩で息をしている。
まさか、きらりが坂倉を?
「今度、わたしの彼氏をいじめたら
ただでは済まさないわよ」
きらりは気絶している坂倉を見下ろした。
そして取り巻きたちに言う。
「あなたたちもよ」
取り巻きたちは肩をビクッと震わせ「ハイ……」と
声を揃えて言った。
「何の音だ!!」
男性の声が聞こえる。
おそらくきらりが坂倉を投げ飛ばした音を
聞いたのだろう。
「あ、やばい」
きらりは僕の手を掴み「逃げるよ!」
と笑みを浮かべた。
胸が温かくなる。
僕を助けてくれたのは君が初めてだ。
「ありがとう」
きらりはピースサインをしてにかっと笑った。
◯◯◯
「きらり、大丈夫?」
僕は肩で息をしているきらりに声を掛けた。
尋常じゃないほどの汗が額に浮かび、顔が白い。
少し走っただけなのに、これほど体調が
悪くなるとは重病なんだな……。
無理をさせてしまった。
「きらり、ごめん」
謝るときらりは苦しそうにしつつも笑顔を見せた。
「彼氏がいじめられてたんだから当然でしょ?」
きらり、お願いだから無理をするな。
なんで、僕なんかのためにそこまでするんだ。
「保健室に行こう」
きらりはゆっくりと頷いたかと思うと
その場に倒れた。
「え?! きらり!」
返事はない。
僕はきらりを背負い、保健室に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!