きらりと宙人

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きらりと宙人

幼い頃、両親が離婚することを知らずに 無邪気に「ずっと一緒だよ」と笑った。 二人はわたしの言葉に ずっと一緒だと笑ってくれた。 だけど両親は数年後、別れたの。 小学校に上がってからも 好きな人の話で盛り上がり、友達に口止めしたのに、翌日、黒板に大きくわたしの名前と好きな人の名前が書かれていた。 それでも、わたしは人を信じることをやめなかった。 そんなある日 仲良くしていた友達からこんなLINEが届いた。 『きらり、マジうざい』 メッセージはすぐ取り消されたけどわたしの 心には大きな亀裂が入っていた。 それから、わたしは人を信じられなくなっていた。 上っ面の笑顔で、上っ面だけの友達と一緒に過ごす。 なんてつまらない日常なんだろう。 そんなある日私が重い病気だということが分かった。 お母さんは涙を流し悲しんだ。 お父さんも悔しそうに唇を噛んでいた。 その涙さえ信じられない。 「余命一年か やりたいことやるしかないよね」 感傷に浸ってる場合じゃない。 だから、わたしは自殺しようとしていた君に 「死ぬくらいならわたしと付き合ってよ」 って言ったんだ。 巻き込んでごめんね。 でも、本当は一回ぐらい人を信じてみたかったんだ。 あのときの必死な表情は嘘だとは思えないよ。 心の傷が少し癒された。 君と過ごす時間がわたしはとても好きだった。 自然体でいられたから。 そして、君の優しさに救われた。 わたしに向けてくる視線はいつも優しさに 包まれていて、わたしの心に光を灯してくれた。 だから君がいじめを受けているのを見て体が勝手に 動いてたよ。 いつ、死んでもいいと思っていたのに なんでだろうね。 君と一緒に生きていきたいと思ったんだよ。           ◯◯◯ あれから、わたしは救急車で運ばれて 病院に入院したそうだ。 そして、坂倉たちは謹慎処分を受けたという。 当たり前だよね。 それから毎日宙人は病院に訪れた。 夏の間、ずっと。 宙人と笑い合ったりする時間が楽しかった。 けど、そうしているうちにもわたしの命の期限は 刻一刻と、迫っていた。 「宙人、まだかな」 そう呟いてハッと口を押さえる。 やだ、何言ってるのわたし。 これじゃ、まるで宙人のこと待ってるみたいじゃん。 そのとき、部屋の扉が開いた。 「宙人」 「果物持ってきたよ」 宙人は果物の入った籠を顔の前で見せた。 バナナやリンゴ、パイナップルなど たくさんの果物がある。 彼は優しく笑った。 胸がトクンと音を立てた。 その笑顔に安心感とは違う何かを覚える。 「気を使わなくて良かったのに」 わたしは笑いながら言う。 実を言うとわたしの病状はかなり悪化していた。 いつ死んでもおかしくないという。 せめて、宙人と星空を見たかったな…… そうだ! 今夜行けばいいじゃない。 「ねぇ、今夜星空の下でダンスパーティをしようよ」 「え、でも」 困惑の表情を浮かべる宙人にわたしは笑みを見せた。 「大丈夫、お医者さんにはちゃんと許可取るから!」 わたしはにっこり笑った。
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