16人が本棚に入れています
本棚に追加
星が好きな彼女
僕と彼女は星空の下でダンスをしていた。
彼女……星野きらりは悲しげに笑っている。
僕はその笑顔を見てキュッと胸が
切なくなるのを感じた。
「楽しいね、宙人」
ターンをしながらきらりは
楽しそうに笑った。
「うん」
僕は笑顔を見せた。
彼女が纏っているのはドレス……ではなく
病院着。
きらりは重い病で余命三ヶ月を宣告されていた。
なぜ、きらりが死ななければならないのか。
恋人であるきらりがもうすぐ死ぬという事実に
打ちのめされた。
けれど、本人は僕の気も知らず楽しそうに
ダンスを踊っている。
彼女は、自分がもうすぐ死んでしまうと分かると
「星空の下で一緒にダンスをしたい」と病院のベッドで言った。
彼女は星空が好きだった。
彼女の頼みなら、と僕は引き受け、今に至る。
きらりが強がっているのは分かっている。
僕は涙を流さないように夜空を見上げた。
「あ」
星の雨が降り注いでいる。
僕たちは足を止め空を見上げた。
星の雨よ、もっと降れ。
僕の願いを叶えてくれ。
きらりが生きていてくれますように。
「綺麗だね」
きらりはうっとりと夜空を見上げる。
「踊ろう!星の雨が止んでしまう前に」
きらりは僕に手を伸ばす。
僕はその手を取り頷いた。
「あぁ。君の頼みなら何百回でも」
僕はにっこり笑った。
きらりも笑い返すが、突然「うっ」と声を漏らし
吐血した。
血が彼女のスカートを汚す。
「きらり!!」
地面に倒れそうになるきらりを抱き止め
ゆっくり地面に膝をついた。
「宙人……わたし、もうダメみたい」
瞳を潤ませるきらり。
「そんなこと言うな!」
お願いだから死なないでくれ。
星の雨が降り注ぐ中、僕は願う。
「宙人……愛してる」
きらりは花が咲くように笑う。
僕の頰に手を伸ばしたきらりの手が
力無く地面に打ちつけられた。
「きらり? きらり……!!」
涙が次から次へと溢れ出る。
君のいない世界で、僕はどうやって
生きていけば良いんだよ。
僕はきらりの亡骸を抱きしめ、嗚咽を漏らす。
「僕も、きらりを……愛してるっ……」
星の雨が降る幻想的な光景の中で僕は泣き続けた。
これは、僕ときらりが恋に落ちるまでの物語である。
最初のコメントを投稿しよう!