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これからも、よろしくね?
これからも、よろしくお願いしますね。
……少し、違うかしら。
この言葉に気持ちをたくさん、たくさん。
込めているのよ?
あ、また黙りこくっちゃって。
何てね、うふふ。
昔はどんな風に喋っていたっけ?
……そうね。
今日は特別に、出逢った頃の私に戻って、お話をしましょうか。
●
君と出逢えて、幸せだったよ。
ホントのホント。
こんな感じ?
……結構恥ずかしい。
こんなお婆ちゃんがって、笑ってもいいよ?
今なら許してあげる。
●
私、幸せだったよ。
大好きな君と、ずっと一緒にいれた。
遠い昔に、照れ笑いした君が私に言ってくれた言葉、覚えてる?
『お爺ちゃんお婆ちゃんになっても、毎日手を繋いでいたいね』
その言葉が嬉しくて泣いた私を見て、君は大慌てしたっけ。
だって、ホントに嬉しかったんだもん。
私もそう思ってたから。
ずっと、あの言葉が心の支えだったんだ。
今も、ほら。
手を繋いでるよ。
毎日毎日。
お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても、手を繋いでるよ?
今日も仲良しさんだね、私達。
なんちゃって、にひひ。
●
『年を取ると、好きな人の皴の一つ一つ迄愛しいって本当かな?』
ホントだったよ?
君が頑張って生きてきた証は、すごく愛しい。
白くなった髪の毛。
目じりの皴、そして皴だらけになった身体。
意識がなくっても命を振り絞って。
懸命に生きた君の姿は、宝石よりも、何よりもキレイだった。
でも、ズルい。
一人だけ、ずっとずっとキラキラしちゃってさ?
自分だけそんなカッコイイままで、ホントにズルいぞ?
●
ね、笑わないで聞いてくれる?
君の気持ちが、私を好きって言ってくれたあの頃のままならさ。
ここに、君を愛する私がいるでしょ?
私は、さ。
好きな人同士は、またいつかきっと出逢えると思ってる。
死が、時間が、距離が。
二人をどんなに離れ離れにしても。
絶対に逢えないなんて事、ないと思うんだ。
それにさ。
私が君を探しに行けば、もっと確率が上がるでしょ?
絶対。
絶対に。
君に向かって、いつだって歩き続けるから。
手を伸ばし続けるから。
もし、ふさふさ真っ黒のポニテがちらり、と見えたら。
それは私だから、また立ち止まってくれる?
そしたら、今度は私から告白する!
ほら、また逢えた! って。
言った通りでしょ? って。
逢いたかったよって。
やっぱり大好きだよって。
君の彼女にして下さいって。
ダメですか? って。
もし、逢えて嬉しくて泣いちゃって、言葉にできなかったら。
そしたら、少しだけ待っててね。
告白する迄、待っててね。
今だって、泣いてないでしょ?
我慢できてるでしょ?
できてるのっ!
●
だから、これからも、よろしくね?
次こそは、海でオヘソが見える水着見せてあげる。
ぱ、パレオなし……はまだ早いかな。
……そこは応相談、でリクエストも受け付けます。
楽しみだね!
君の真っ赤な顔が、目に浮かぶ!
なんて、ね。
……そろそろかな。
ナースコールするね。
……ウソ。
ズルいよ、不意打ちなんて。
涙。
……もう一回、言っていい?
今日もちゃんと、傍にいるから。
君が天国に行くまで、手を握ってるから。
これからも、よろしくね?
くく、って指先、ほんのちょっとだけ動いた。
私も涙、止まんないや。
またね。
大好きだよ。
今までも。
これからも。
君だけを。
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