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御所望はオードブル料理とあなたの時間
季節は冬を迎えた。
今日は月に一度の会社での
ミーティングのため唯は
『ニコニコ家事代行サービス』の
会議室にいた。
全体会議が済むと、各スタッフが
チーフリーダーとその月の
スケジュールを確認する。
チーフリーダーの圭子さんが、
唯に言った。
「唯さん、今月 時間に少し余裕あるかな？」
「はい、一応少しなら大丈夫ですけど……」
「それなら、よかった。東田様から、
派遣日の追加依頼がきたの」
「東田様から追加依頼ですか？」
「そう、あなたの料理が
とても気に入ってるらしくてね。
是非、今度はクリスマスオードブル的な
料理と、全部屋の大掃除をお願い
したいって。
ほら、年末だと、唯さんも立て込むから、
その前に集中して」
「はぁ、わかりました……で、
日程はいつですか？」
「十二月二十四日
午後五時から午後九時まで」
「えっ、夜なんですか？」
「だめかしら？」
「いえ、一応開いてますけど……」
「そう、よかった。
それから二十五日 時間は同じで」
「えっ？ 二日間連続なんですか？」
と驚く唯。
「だめかしら？ クリスマスだから、
他のスタッフも家族サービス等が
あるみたいで。それに、新しいスタッフ
派遣しても、色々とわからないでしょ。
それに、東田様追加料金も支払うって
言ってくださってるし、
メールの文面からしても、紳士的だから……
ね、お願い！」と拝まれる唯。
拝まれると断り切れないのが唯。
タブレットを取り出し、スケジュールを
確認すると、
「わかりました」と返事をした。
数日後、唯は悠の部屋で家事にとりかかる。
連絡ノートには、
東田様
十二月二十四日、二十五日、両日の件
お受け致しました。
オードブルを御所望とのことで、
内容等を記載していただけると助かります。
キヌコ
そして唯は、メモ用紙に、
クリスマスイブとクリスマス当日に……
私がキッチンでオードブルを
作っていたらおうちデートとか
出来ないんじゃないですかね？
キヌコ
……と記した。
数日後、唯が連絡ノートを開くと、
キヌコさんへ
オードブルはお任せで二人分。
すみませんが、買い出しから
お願いします。予定時刻前に
到着された場合も追加料金を
支払うことに了承しておりますので、
よろしくお願いします。
東田
そして、メモ用紙には、
両日の時間あけてもらってありがとう。
十二月 二十四日と二十五日は
クリスマスコンサートがあるんだ。
それが終ったら帰れるからさ、
俺とクリスマスパーティしよう！
ケーキは俺が準備するから……。
それから、
追伸、だから、部屋の大掃除は
しなくていいから。
（一応したことにしておいてね）
唯は悠のメッセージを見ると、
「あ～、だから、派遣希望時間を
夜にしたのか。でも、これって何で？
まぁ、いいか……」
と特に気にする様子もない唯だった。
夜遅くに帰宅した悠、
わかりました。
では、ご希望通りにお伺いします。
キヌコ
と貼られたメモを見ると
優しく微笑んだのだった。
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