あなたとの約束

1/2

116人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ

あなたとの約束

ピンポーン……。 悠の部屋のインターフォンが鳴った。 悠が玄関のドアを開けた。 目の前に『キヌコさん仕様』の唯が 立っていた。 「こんばんは……いらっしゃい」 と言うと唯を部屋に招き入れた。 リビングに入ったふたり。 唯はウィッグを外すと、 「お仕事で疲れているのに  夜分にすみません……」  と言った。 「大丈夫だよ。気にしないで」 「どうしても、悠さんに  伝えてもらうようにお願いしたら  林さんに直接自分で伝えた方が  いいと言われて……」 「そうだったんだ。  メモ見た時は驚いたけど、  キヌコさん……あっ……唯ちゃん」 「キヌコさんでいいですよ……」 と唯が微笑みながら言った。 「どうも、こっちの方がしっくりくるんだ。  キヌコさん、壁乗り越えられたの?」   と悠が聞いた。 「はい、悠さんと撮影現場で会った後に、  無事乗り越えられました。  あの時も、悠さんに背中押されたから……」 「そうか、よかった……」 「それで……私、デビューが決まりました」 「えっ……本当?」 「はい、某清涼飲料水の  イメージガールとCMに……」 「うわぁ。凄いじゃん、凄いよ」と言うと、悠は唯に抱き着いた。 「ふふふ、悠さん、痛いですよ……」 と悠の腕の中で微笑む唯。 唯を抱きしめたまま……悠は 「本当によく頑張ったな。  キヌコさん……最高!  流石!俺の『推し!』」と言った。 「でも、まだ悠さんからもらった  台本ケースを使うまでには  行き着いてないので……」と唯が言った。 「じゃあ、約束しようよ……」 「約束?」 「そう、俺との約束。  いつか俺と一緒に作品を創る……」 「それって、共演ってことですか?」 「そう、『RAINの悠』じゃ、役不足?」 と悠が微笑んだ。 「そんなこと,悠さんにそう言って もらって、とても幸せです……」 「じゃあ、俺はその時が来るまで  全力で唯ちゃんを『推し』まくるから、  どんな時も俺が推してること  忘れないでね……」 「はい、必ずあなたの前に立てるような  女優になってみせます。  悠さん、私、あなたとお約束します」 「うん、わかったよ。じゃあ、俺も、  君と約束するよ……」  と言うと悠は唯の耳元で囁いた。 唯は、悠の言葉を聞くと、満面の笑みで、 「はい……」と言った。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加