6.10日間ひとりでお留守番をする幼稚園児

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6.10日間ひとりでお留守番をする幼稚園児

✼••┈┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈┈••✼ 今は地味なアラフォー主婦🍳 𓈒𓂂𓏸 母はストリッパー、父は男優。 そんな昔の話✍️ ✼••┈┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈┈••✼ 新しく建ったばかりの家は、文字通り体を張って稼いだ両親のおかげで、とても広かった。 玄関は吹き抜けになっていてシャンデリアがぶら下がり、シャンデリアの上には天窓から日差しが降り注ぐ。 広々としたリビングとの仕切り扉はガラス張りで、リビングに居ても玄関の人の出入りが見えるようになっていた。 リビングの窓からは、敷地内同居である祖父母の家の玄関が見えた。 二階には私の部屋、父の書斎、両親の寝室にシャワールーム。 私の部屋には内窓があり、シャンデリアがキラキラ光を反射させていた。 そんな豪勢な一軒家に、一人で留守番をする10日間が始まった。 朝食と夕食は祖父母の家で、昼食は幼稚園で済ませる。 それ以外の時間、一人ぼっちだった。 そして祖母は毎回決まって言うのだ。 「普通の親は傍にいてあげるのにねぇ、なっちゃんは可哀想に。 普通の仕事じゃないから仕方ないねぇ。 ばぁちゃんはね、いつも言うんだよ、普通の仕事をしなさいって。 なっちゃんが可哀想だよって。 それなのにどうしてこんな仕事をするのかねぇ」 当時5歳の幼い私は、祖母の言う事をそのまま信じた。 だって、お友達のおうちはパパとママがいるから。 「なっちゃんのママ、今いないの?」 「そうだよ、パパもママもいないよ。 じゅうにちいないよ」 「そんなに?なんで?」 「しごとだよ。しゅっちょーっていうんだよ」 「ふぅん、かわいそうだね、なっちゃん」 そんな会話を何度繰り返しただろう。 そうか、私は可哀想なのか。 幼稚園ではお迎えの時間が憂鬱になった。 いいな、ママが、迎えに来てくれるなんて。 ”やっぱり、おばあちゃまの言う通りなんだ” と悲しくなりながらバスに揺られるのだった。 幼稚園から帰っても誰もいない。 でも、淋しくて泣く事はあまりなかった。 「泣き虫ねぇ」 「子供ねぇ」 と、常々母に言われていたから。 ただ胸にぽっかり穴が開いたような、言葉にならない気持ちで苦しかった。 祖父と祖母は用事がある時以外はうちに来ない。 一人お腹を空かせて、夕飯のお知らせを待つ。 テレビは16時からのアニメの再放送だけは見ていた。 アニメの世界の事を空想しながら、時間が過ぎるのをただただ待った。 お決まりの「なっちゃん可哀想」を聞きながら夕飯を済ませ、食事の後は自分の家に帰る。 祖母とお風呂に入り、一人でベッドに向かう。 チクタクチクタク 時計の音が耳に障る。 あと何回寝たら、パパとママは帰ってくる? 両親からは時折電話があったけれど、携帯電話もない時代だったし、両親はステージの時間もあってタイミングが合わず、毎日とはいかなかった。 声が聞けないと淋しいと思う反面、声を聞いた後の方がもっとずっと淋しかった。
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