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2.ストリップのステージから、ひょっこり娘
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今は地味なアラフォー主婦🍳 𓈒𓂂𓏸
母はストリッパー、父は男優。
そんな昔の話✍️
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ストリップ劇場での暮らしも慣れて、暇を持て余した4歳の私。
ある日、私は突然、”応援してあげたい”と思った。
ステージの袖から応援してあげたら母は喜ぶに違いない!
きっと喜んで、たくさん褒めてくれるはずだ!
ふと、そんな風に思った。
ステージのリハーサルは何度も見たことがあったのだけど、本番は見たことがなかった。
そういう興味も少なからずあったと思う。
普段はおとなしくて親の言うとおりに楽屋から出なかったけれど、勇気を出して楽屋から抜け出した。
劇場の裏は小ぢんまりとしているので、細い通路を抜ければすぐに舞台袖だ。
袖にはスタッフが一人いたけど、
「わざわざお母さん見に来たの?
暗いから気を付けてね」
と、優しく言ってくれた。
褒められたみたいで嬉しかった。
ステージの音響が身体に響く。
自分のドキドキなのか、音響が響いてるのか、自分でもわからないくらいだった。
一歩、袖に踏み出してステージの上にいる母に手を振った。
ちょうどステージ終盤だったようで、一糸纏わぬ姿だった。
”ここからならお客さんからは見えないだろう”
そう思っていたのに、お客さんとばっちり目があった。
”どうしよう”
そう思った瞬間、パニックになって身体が動かなくなってしまった。
お客さんの異変に気付いた母が、ハッとこちらを振り返った。
そこからの記憶は断片的だ。
ステージを終えた母に引きずられて楽屋に戻ると、思いっきり頬を引っ叩かれた。
私の小さな身体は吹っ飛んだ。
「何でこんな事したの?!
子供がいちゃいけない場所に決まってるでしょ?!
何を考えてるのよ・・・あぁどうしよう・・・」
と、母自身もパニックになっていた。
取り乱す母を追いかけてきた父が宥めていた。
「子供なんだから仕方ないだろ?!
それよりスタッフ!!
お前なんのために袖にいるんだ!!」
と、父の怒りは私ではなくスタッフに向いていた。
頬を引っ叩かれたのは初めてでショックだった。
でも、痛みよりも、悲しかった。
”褒められると思ったのに。
ママを応援したいだけだったのに・・・”
いつも優しいスタッフさんも、私のせいで怒られている。
恥ずかしくて悲しくて、消えてしまいたかった。
今思えばバカな話だ。
でもあの頃はまだ、
”ストリップ劇場に子供がいてはいけない”
”いるはずがない”という世間の常識も、業界の事も知らなかったのだ。
”ここが普通の場所ではない”という事も。
そんな私も鈍感でバカだけれど、そんな幼い子を楽屋に一人残していくのもバカな話だ。
私は今思えば特段、おとなしい子供だったのだと思う。
子供の友達や知り合いもいなかったし、両親と常に一緒にいた私は、公共交通機関での長距離移動もこなしていたのだ。
今みたいに暇をつぶせる物もなかったし、文字も読めなかったのに、だ。
子育てをしながら思う。
”うちの子に私の子供時代のようなストリップ劇場生活は絶対に、ぜーーーったいにできない!”と。
それだけは断言できる。
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