127人が本棚に入れています
本棚に追加
5.ストリッパーの娘、幼稚園へ行く。
✼••┈┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈┈••✼
今は地味なアラフォー主婦🍳 𓈒𓂂𓏸
母はストリッパー、父は男優。
そんな昔の話✍️
✼••┈┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈┈••✼
ストリップ劇場の巡業と、家との生活を送っていた子供の私。
当然、幼稚園や保育園には通っていなかったのだけれど、年長さんから幼稚園に通う事になった。
最初は初めての幼稚園生活が楽しかった。
クラスのお友達もたくさん話しかけてくれた。
だが、気付いてしまった。
私が”物珍しくて”話かけてくれている事に。
派手なファッションやメイクの母。
その娘の私は長い髪にパーマを当てていた。
それに幼稚園は年少さん(3歳)から通えるので、年長さんから通うのは私しかいなかった。
「今までどこの幼稚園にいたの?」
「この遊び知ってる?」
「どんな遊びが好き?」
私もクラスメイトもお互いに、未知との遭遇だ。
子供同士で流行ってる遊びなんて知るはずもない私には、まるで宇宙人との会話だった。
それでも、最初はチヤホヤされて嬉しかったので、幼稚園から帰ってからは父や母に幼稚園の話をした。
「私は子供の世界に馴染めたのだ」
とでも言うように、自信満々に話すのだった。
母は派手ではあったがコミュニケーション能力が高かったので、すぐに”ママ友”と呼べる存在ができたようだった。
「お友達があなたのことお姫様みたいだって。
パーマかけて良かったわ」
と鼻が高いようだった。
髪の多い私がパーマをかけると髪は絡んでばかりで、お風呂の度に泣いた。
長い髪も、パーマも、私はちっとも好きにはなれなかった。
それでも、辟易する事も多かった。
「みんなー!園庭で遊ぶよー!」
と担任の掛け声で、みんな一斉に飛び出していく。
肩がぶつかろうが、足を踏まれようが、自主申告しなければ謝ってももらえない。
”他人に触る”という事に抵抗がない子供が多くて、「触らないで」という言葉を飲みこむばかりだった。
それに子供という生き物は、すぐに甲高い声を出したり叫んだりする。
うるさくて眩暈がした。
給食センターで作られるお弁当はちっとも美味しくないし、私からするとトイレは臭くて汚かった。
お人形や塗り絵で遊んでいても、すぐに飽きてどこかへ行ってしまう子もいた。
子供の考える事など、ちっともわからなかった。
それに加えて、多くの子供たちは体を動かすことが好きらしかった。
私は砂で汚れるのも嫌だったし、体の動かし方も知らなかった。
体操授業がも、外遊びも苦痛で仕方なかった。
そんな感情を、やっぱり大人には言えなかった。
”幼稚園でも上手くやれている”自分でありたかった。
本当は同い年なのに子供の事が嫌いだったし、そんな幼稚園にはウンザリしていたのだけれど。
そして私が幼稚園に通うようになり、ストリップ劇場への巡業は、留守番をすることになった。
食事は祖父母が用意してくれるらしかった。
でも、ストリップ劇場の公演周期は10日間だ。
10日間。
それは子供の私にとって、果てしなく長い時間に感じた。
つづく
最初のコメントを投稿しよう!