あわない二人

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「子供のときにはあったよ、何か見えたこと。一緒の部屋に寝てた妹がお寺に泊まりに行った夜にね、ひとりで寝るのが怖くて全然寝られなくって。目をぎゅーっと瞑ったらそこに人形が見えてさ、最初は可愛かった顔がみるみる恐ろしい顔になって叫ぼうとしたら声が出ないし体も動かない」 「金縛りね」 「だけどね、だんだんそれが面白くなってきちゃって。絶対に動いてやる!って頑張ってたら人形は消えて動けた。それ以来は何もないけど」 鼓動がリンクしたときに超常現象は見える。信じる人にだけ見えてしまうのはそのためだ。なんでもないようにしていても、彼女にはまださっきの侵入者の恐怖が残っている。 「助けてくれてありがと。これからもよろしくね」 「え?」 「あたしは結婚するとかない限りここに住むと思うし、あなたはずっといるんでしょ?鍵掛け忘れたら次はちゃんと教えてよ?」 自分のことばっかり話して、わたしが何故ここにいるのかも聞いてこない。そういうところよ。あなたにわたしが見えないのは。 多分もうすぐまた彼女はわたしを見えなくなって、さっきのような恐怖を感じる体験をするまで気配も感じ取らなくなるだろう。他の人たちならわたしに恐怖を感じていつでも会えるのにね。 「自分の身は自分で守りなさい」 これからもよろしくねだなんて、この子どうかしてるわ。 でも せっかくだからもう少しだけここにいて、ゴキブリぐらいは追い払ってあげよう。まだいっぱいいるから。 彼女がこの部屋に恋人を連れてきた日にここから去ろうとわたしは決めた。 サヨナラは聞こえないのでしょう。
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