異常気象は人さえ変える

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 玄関に逆さに吊り下げていたてるてる坊主がなくなっていた。 「やられた」 「お母さん、近所の人に聞いてみようよ」  パンデミックの時動揺に、逆さてるてる坊主を作っていない家があると、石を投げられる被害が相次いでいる。  逆さてるてる坊主警ら隊によって、逐一報告される。1度は作ってますよと画像を上げても信じてはくれない。 「いつから和の心がなくなったのかな?助け合いは昔からある素晴らしいことなのに」  母は目を細めて遠くを見たあと、ふらふらし始め、ゆっくりと倒れていく。 「お母さん、お母さん!!」 ****  倒れこんだ母を抱え部屋に戻ると、蛇口を捻る。政府による節水行動で、出ている水は勢いが弱い。  誰もが雨のありがたさを知った。雨が降らないとどうなるか、ひしひしと実感して。  ガラスに映るコップ。  ゆっくりと溜まっていく水がもどかしい。  冷える額に貼るシートだって。  アイスだって。  飲み物という飲み物は、一斉にスーパーから消えていく。 「ふれ、雨・・・ふれ!!」  何度口にしただろう?口にしてすぐに降るものじゃないのに、溢れるのは暑さで汗と涙が頬を伝うだけ。
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