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うだるような暑さの深夜。
自宅兼アトリエとなっている音弥の自宅のリビングはとても重い空気で満ちていた。
「お願いですから、散歩でもどこかへ行くときはスマホを持っていってください……」
俯いて微かに震える光鶴の冷えきった手をとり、自分があまり変わらない体温だと苦笑したくなった。
「ごめん、丁度充電してたみたいで、今日は本当になにも記憶にないんだ」
なぜあの公園に行ったのかすら判らない。
サプリメントだと言っていた味の分かる食事も、あの店がクロスしたスプーンの看板の店なのかも判らない。
判らないことばかりだ。
「今度は常に身に付けれるものにGPSを仕込みます」
「うん、わかった」
事前に伝えてくれるのだからいい。
迎えにきてもらう立場で、迷惑をかけている自覚もある。
「なぁ、光鶴。今日はボトムがいい」
「……なにがあったか、教えてもらいますからね」
しっとり熱を含んだ声で誘えば、まだ少し不服そうながらネクタイを緩めて応えてくれる甘い甘い自分だけの〝ケーキ〟。
「教える、けど……酷くしてくれよ」
胃のなかが、口から喉のなかが、侵されたような感覚で気持ち悪かった。
優しく優しく、舌を絡めて唾液を音弥が飲むようにキスをしながらお互いの衣服を脱ぎ捨てていく。
明日の片付けなんて気にしていられない。
いつもお互いを貪るようにセックスをする準備はしていると知っているからこそ、気が急く。キスで飲みきれなかった、どちらのものかわからない唾液が顎を伝って喉を濡らし、胸元まで垂れているものを、ゆっくり舌で舐めあげながら尾骨を擽られる。
もどかしさで身をよじれば、胸を弄られて更に焦らされてしまう。
「音弥、音弥、俺の愛しい〝フォーク〟。なんでそんな顔をするんですか?」
悲しい、苦しい、気持ち悪い。
そんな感情を打ち消すよにキスを求めて、不快感を甘い快楽で上書きしてほしいと伝たいが、光鶴の長い指が喉まで犯して声が出せないため、視線で懇願しても微笑んで無視され、とりあえずと一回射精させられた身体は早く挿れてほしくて切なくて涙が溢れる。
「焦らないで、大丈夫。俺はここにいます。ねぇ、音弥」
どろどろに溶けたチョコレートのような甘い声で耳を犯され、キャンディのように甘い指が喉、上顎を擽り、舌を揉みしだかれて息苦しさを快楽で思考ができない。
「んん……っ、はやく、挿れてくれよ」
生理的な涙が頬を濡らして全身が性感帯になるまで虐められ、半勃起状態で体液を垂れ流しながら懇願して、ようやく挿入してもらえる。
昂りすぎて辛い。落ちてくる汗にさえ快感を覚えるのに、まだ挿れてくれないのかと睨めば、今まで熱い口のなかを蹂躙して濡れそぼった指を舐める光鶴の獰猛な野獣のような眼光に軽く達してしまう。
「ぃぁっ……」
「ん? 音弥、今軽くイった?かわいい。かわいい。いつも格好いいのに、僕のをはやく欲しいのに我慢して真っ赤になった顔も、期待でヒクつくお尻も全部かわいい。なんで俺が〝フォーク〟じゃないんだろうって思うくらいにかわいいよ」
内腿を撫でて、腰を掴んだと思った瞬間、奥まではいっていた。
呼吸が一瞬止まるほどの快感に喘ぎながら長い足を光鶴の腰に絡め、腰を掴んでいる手を自分の喉へと誘い、期待で収縮する声帯で懇願する。
「……、……ぁ、絞めてぇ……っ」
光鶴の表情が一瞬固まって、ゆっくりと嗤う。嗜虐心は誰にでもあり、被虐心の重さは嗜虐心の重さだと感じる瞬間だ。
「わかりました、よっ!」
奥を貫くタイミングに合わせて首を絞められると、男を受けいれている粘膜が締まって男の形がよく判り勝手に足に力がはいって尻でペニスを追いかける。
「っ、カヒュッ……ぅあぁ……」
──気持ちがいい。
首を絞められることで呼吸管理をされ、視界が白くハレーションする。脳ミソがバグを起こしそうだ。男は命の危機を感じた時、子孫を残そうと発情しやすくなる感覚に似ているのかもしれない。
片手で首を絞められ、内腿を支えられながら腹の奥まできそうな深い突き上げでまた達した。
「音弥、おとや、俺だけを見て、感じて、俺を食べて……」
首を絞めていた掌が音弥の頬に触れて唇をくすぐる。甘えたいという仕草だ。
「ん、ぃいよ」
光鶴の首に腕を回し、下唇を甘噛みして舌を絡めて吸い上げ、上顎をなぞって煽れば甘い声を出す。本来ボトムの光鶴はお尻でしか達せない。音弥を犯せば犯すほど自分も切なくなるのだ。
「ん……っ、ぅあ……」
「光鶴も、俺のナカかき混ぜてたら感じちゃった?」
──かぁわいい。
耳元でギリギリまで絞った声で囁くと、ドライオーガズムで達したらしく、舌をつきだして痙攣している身体を組み敷いて愛撫するたびに軽く達しているのか、もうずっとドライで達しているのかわからないくらいどろどろになっている。
「……ひぅっ……ぁっ……」
「あー、みつのお尻トロトロ。いれるよ」
ゆっくりゆっくり、熱く熟れた粘膜のなかに挿入すると吸いとられそうなほど蠢いて思いっきり突き上げそうになるのをぐっと堪えた。
「んぁぁ、ぁあ……、はやくぅっ」
「さっきのお返しだよ」
結腸ギリギリまでゆっくり挿入して少し待つ。粘膜が意思を持っているように奥へと誘い込もうとうねり、やわやわと締め付けを繰り返す感覚を楽しみながら、紅くなっている胸の飾りを押し潰して舐めて吸い上げ、これ以上ないほどにグズグズにしていく。
「……、……っ、もぅ、ぃゃ……っ」
生理的に流れる涙も、溢れるも涎も、汗の一滴も、濃厚な甘さで音弥の喉を潤し──はやく食べたい。と飢えを助長させる。
「可愛い、いただます」
晒された白い喉仏を甘噛みして、結腸へと突き上げた。
悲鳴も呼吸もままならない光鶴を撫でながら肩口に噛みつく。
音弥の犬歯が光鶴の皮膚を貫き、赤い甘露が音弥の喉を潤し、胃を満たした。
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