これからもよろしくね!

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これからもよろしくね!

「あ……」  日記から、一枚の折り畳まれた手紙が落ちた。  そこには“大好きな人へ”と書かれていた。 『大好きな人へ。これを読んでいるということは、恐らく私の秘密に気付いたということかな。私は君と出会ってから半年した頃に、突然病気を告げられました。体力が減ってきて、疲れやすくなっていたことは、運動不足かなと思っていたけれど、残念ながらそうではなかったみたい。身体が少しずつ動かなくなってくる難病とのことです』 「それなら……言ってくれよ……」 『君に心配をかけたくないということと、言うのが怖くて、友達にも言えませんでした。でも、それでいいと思っています。悲しんでほしくないから、突然いなくなるのは私としても後悔すると思うので、その前には、別れを告げていなくなろうと思っていました』 「怖かったなんて……、言ってくれれば向き合ったぞ」 『でも、日々が楽しすぎてなかなか言えずに気づけば入院となっています。しばらくは退院できそうにないと聞いて、もう隠すことはできないと思いこの手紙を君に渡しました。こんな私とずっとずっと、一緒にいてくれてありがとう!』  大地の頬には涙が滝のように流れて、握る手紙も震える。気づけばポタポタと、手紙にもその涙が零れ落ちて、文字を滲ませる。 「私の最初で最後の恋人さんへ」 “これからも――――よろしくね!” 「これからも……よろしく」  “入院”という言葉で大地の心は、掻き乱される。行かなければいけないと。病院が何処なのかわからない。けれど、それは今まで気づくことのできなかった自分が招いた結果だと彼は思う。  彼女を探すことを決意した瞬間……、 「見つけちゃったんだね。その手紙」 「えっ……」  大地の背後から聞き覚えのある声が聞こえた。 「気づかれないようにしたかったのにな……、これからもずっと……」 「詩織……?」 「私はもう死んでいるの。でもずっとずっと、一緒だから。離してあげないよ」  ふと、大地は思う。彼女は6月1日から暫くの間入院していると手紙には書かれている。  でもそれ以降も学校では一緒に昼休みを過ごして、デートまで行っている……それは何故なのか。 「ちょっと待て、それって……まさか」 「気づいてしまったみたいだね。私はもう君を絶対に離さないし、誰にも渡さないよ」  そう。大地や教室の全員、6月になってから彼女と関わった人達全員が見ていたのは、もういるはずのない詩織の姿。大地の背後で不気味に笑う彼女は少しずつ近づいて来る。  背筋が凍るような感覚と、今まで見ていたものがまさか存在し得ない詩織という事実を知って、怖くて振り向くことができない大地。 「これからもよろしくって……」 『言ったよね。どんな変化にでも気づいてくれるって。でも気づいてくれなかった。だからこれは、罰だ』  教室に響く足音と共に真後ろまで近づいてきた彼女は、大地の耳元で不気味な笑みと共に囁くのだ。    “来世になってもずっとずっと“              “君は永遠(とわ)に私のもの――”      “これからもよろしくね”  おしまい
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