20人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
楽しいデート
5月27日、土曜日――。
二人は朝から少し慌ただしい。学校は休みであるのだが、登校日よりも早起きして服装と心の準備をしなければならない。
ちなみに二人が“デート”に出掛けるのは、だいたい1ヶ月と半月ぶりなのである。大地が生徒会の委員長に任命されたことで放課後の時間は消え、逆に休日はというと彼女の方が予定が合わずにいた。
そんなずれてしまった歯車が久々に噛み合うとなれば、気合いも入るのである。
「よし」
「そろそろ行こうかな!」
それぞれ家を出る前に鏡の前に立つ。前髪を少し気にして、寝癖はないか変なところはないか、服は?襟は?と確認する。
鏡の前で満足したならば、いよいよ眩しい太陽照らす世界への扉を開けて歩き出して行く。もう付き合い始めてから1年ほど経つというのに、初めて出掛けた時の感覚を思い出すほどの初々しさ。
「まだ来ていないようだな」
待ち合わせ場所は、最近人気絶頂であるコーヒーチェーン店の前。近くにいるのかと大地は周りを見てみるがまだ詩織は来ていないようだ。
「待った?」
しばらく待つと詩織が到着する。
「全然、時間通りだな」
「間に合わないかと思った」
二人はまず待ち合わせ場所の店に入り、二人でゆっくりと話をする。事前の話で行きたい場所が決まっていないこともあり、ここで一日を考える。
「あの公園、行ってみない?」
「いいよ。懐かしいな」
公園というのは、目指していたお店の途中で通り掛かる公園。しかし、二人にとってそこは思い出の場所である。
「ここだよね。私が「好きだって」言われた場所」
「そ……だな」
「ふふっ。ついでに座って休憩していかない?運動苦手だから体力がなくて」
二人は公園のベンチで休憩をすることにした。公園には大きな桜の木が天へ伸びていて、それを囲むように遊具やベンチが設置されている。広いかと言われるとそうでもない、街中の公園といったイメージだ。
「あれから1年かぁ」
「早いよね。高校生活もあと1年ないし……もっと楽しまなきゃ」
気づけば20分ほど時が経つ。
手を繋いで二人は公園を後にして、楽しい時間は夕方まで続くのだった。
最初のコメントを投稿しよう!