思い出

2/4
前へ
/17ページ
次へ
 「考えることは一緒だね」  3人とも着てる服は、お揃いで買ってもらったセットアップのTシャツとショートパンツだった。  3人で待ち合わせたのは、近所で一番近く、一番眺めのいい河川敷だった。  「ランドセルはいらない気がするけど」  「もうランドセルもこれで終わりでしょ?」  お互いに飛び跳ねながら、ランドセルの存在を確かめ合う。  「でも、何で服にしたんだっけ」  「私が、言ったんだよ」  葵が夕陽を眺めながら言った。  「キーホルダーだと壊れたり、なくしたりしちゃうでしょ?なくさなくても色んなこと思い出しちゃうかもしれない。だけど洋服なら、なくすことはないだろうし自然に着れなくなる。思い出はあまりできないかもだけど、それも自然と忘れることが出来る」  葵の言葉が胸に刺さる。  「葵?」  「だからその一瞬が素敵に思えるし、大切に思えるんじゃないかなって」  ふと我に返ったように、笑いながら慌てて付け足す。  「全部お母さんが言ってたことだけどね」  そう誤魔化し、夕陽を見据えた彼女の目は、どこかもの悲しげに見えた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加