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──痣を持つのは〝喰われる者(ケーキ)〟、痣をつけるのは〝喰らう者(フォーク)〟。
お前は痣をつけられたら駄目だぞ──
夢を、見た気がした。
「〝シュガー〟はまだ?」
「はやく、〝シュガー〟ほしいよぉ」
あどけない声が〝シュガー〟を求めている。
目が開かない。身体が重い。動けない。思考ができない。
「〝Glueckszucker(グリュックスツッカー)〟よ。あら、あんたも来ちゃったのね」
聞き覚えのある女口調の男の声。
「まったく、音無が忠告したでしょう。早く逃げなさいって。まぁ、もう動けないでしょうし、仮に逃げられてもすぐバレるでしょうけどね」
──私たちは殺さないけど、その気になったら殺してあげるわ。
「まったく、〝フォーク〟の連中はマーキングするから困るわよねぇ」
恐ろしい言葉の詳細を確認する事もできず、女口調の男がゆるゆると言い含めるように話す内容を聞くしかない。
「あし、ないの?」
「うでも、ないの?」
「そうね。あなた達はまだあるから大事になさいね」
舌足らずな声の問いかけに応える声は優しかった。
「えぇと、葉桐俊哉くん。本当に残念だけど、もう戻れないわねぇ」
ネームプレートの掛けられた、手足の無い身体は大切に、出来るだけ負荷の掛からないクッションに横たえられ、最低限生かす為の管に繋がれた男は何も判らないままショーウィンドウのなかで狂っていく……。
――了――
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