現金は持たない

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現金は持たない

憎悪、恨み、妬み、 手にした瞬間に、わかってしまう。 ワタシの中にあるソレを増長してしまうから、、、、 【汚らわしい】 いつからだろう。 ガサツな私が、お金を持たなくなったのは、、、、 自分でも思い出せない。 「高校」 「中学」 そのあたりだろう。 もちろん、令和4年の時代に「現金」を持っている人は少ない。 携帯電話は、今や電話の機能はオマケとなり、 「電子マネー」 「電車の定期」 「個人情報」 恐ろしい位に、たった一台の機械に、詰め込まれている。 わたしが、中学の時は、いわゆるガラケーを持っていて、電子メールでのやり取りだった。 ガラケーに、お金がはいる、、とは夢にも思って無かったし、まわりのみんなも同じだと思う。 今、28才になり紆余曲折あったが、バツイチ、子供なし。気がつくと介護の仕事についている。 正直なところ、生活は楽ではない。お給料は友達と比べると、かなり差があるし、区役所に勤める姉とは雲泥の差だ、、。 彼氏は、一度離婚してから、出来た事はない。 もっとも、【男性】に対して距離をとる様になっていたから。 いや、女子会でも、1人「冷めている」一応笑っているが、それはマックの【スマイル0円】と全く同じだ。 仕事は、とにかく大変。 ご老人の下の世話、話し相手。食事介助やゲーム大会。 でも。時々「貴方ステキな目をしてる」      「そんな事ないです。」       「いや、孫にほしい」    まっすぐに、アタシの目を見つめ話しかける。 それが、いやそれだけで「幸せ」を感じた。 どんなに仕事がきつくても、時には憎たらしく感じる事もある。 だけど、その「ひと言」が私を優しく包んでくれた。 我慢できずに、トイレで号泣した事も、一度や二度ではない。 離婚してから、しばらくは人間不信になり友達や、親の言葉さえ全く信用しなかった。 「どうして、自分が」 「あんなに尽くしたのに」 「何が悪かったのか」 「男は、みな同じ、、、」 離婚の原因が、旦那の浮気であった事が、私を変えてしまった。 しばらくは、抜け殻。 セミが、飛び立ったあとに残る抜け殻。 何も、見えなかった。 好きな歌手、好きなドラマ、好きな「キムタク」 全てに興味がなくなった。 ただ、テレビのノイズを見る日々が続いた。 食べる為に、JR内にある小さなコンビニで働き、 🎵が、全く変わらない、意味のない日。 ある日、いつも通りバイトが終わり、交差点で🚥待ちをしていた、、、老人が、転び苦痛な表情をしていた。 「バカだな」 「あんな風になるまで生きたくない」 「何が楽しいんだろう、、」 頭から、無機質な声が聞こえる。 次の瞬間、小さな少年が、老人を抱き抱えていた。 「大丈夫ですか」 「怪我は」 老人は、まぶしい位の笑顔で「ありがとう」と。 その少年は、、、、片足を引きずっていた。 簡単な怪我ではない、それはロボットのワタシにも はっきりわかった。 涙が、、、、 自分でも、わからない位に「涙が溢れた」 🚥が、何度も色を変えても、その場所から動けなかった。 、 、 、 ワタシは、私は何をしていたのだろう。 この世で、「信じられる人間はいない」       「人間は、裏切る動物」 そう、絶望していた 私。 あの少年は、自分のハンデがありながら、老人を助けた。 10分位経ち、天気雨が突然降りだした。 わたしは、涙と雨とが、混ざり合い、ようやく交差点に足を踏み入れた。 すると、今まで景色を失っていた、【心】が優しく溶けだし、周りの音も、素直に自分に入っていった。 家に着くころには、☀️にかわり🌈が空を彩っていた。 🌈がこんなに、ステキなものだとは、、、、 ワタシは、、、 絶望する前の、心を取り戻していた。 全ては、あの少年の「ホンモノの優しさ」に触れたから。 次の日から、「あの少年に近づきたい」       「誰かを救いたい」        「他人を優先する強さを、、」 バイトが終わると、求人誌を必死に読みあさり、 たどり着いたのが、「介護職」だ。 3回目の応募先で、自宅からは、少し遠い所だが、 「正社員」で採用になった。 仕事は大変だった。 1番は、介護する時に、【力】が必要な事。 座ってる、おばあちゃん👵 立ちあがろうとする、おじいちゃん👴 どこを支えたら良いか全くわからず、1か月で腰を 痛めた。 ただ、今まで感じた事がない、充実感を感じた。 おそらく、私の「天職」なんだろう。 仕事中は、いくら「ワガママ」を言われても、不思議と嫌な思いをしなかった。 私が考えた、折り紙のレクレーション。 みんな、笑ってくれた。 子供の様に。 そんな日は、お風呂に入ると、【曇りのない笑顔】を 思い出し、、、いつも泣いていた。 「自分を必要としてくれている」 「ワタシはロボットではないんだ」 「頼りに、明日も待っていてくれる人がいる」 そして、介護職の同僚は、みな「笑顔」がステキだった。 私は、わたしには、それ以上、何もいらなかった。 自宅では、必死に介護について勉強した。 それは、「資格」を取るためではない。 どうしたら、「ご老人に寄り添えるか」 それを、大事にした。 「資格」を持っていても、人の心。 相手の立場に、立つ事ができるか、、、、 それは、「全く別物」だと、知っていたから。 介護の仕事をする様になってから、好きな音楽も、 今まで聴いたことがなかった、「クラシック」に 興味をもつ様になった。 職場で、週に二回ほど、「カラオケ大会」がある。 みんな、「上手い」楽しんでいる。 その歌声も、私の心を癒してくれた。 いつからだろう。 現金を触るのが、【嫌い】になった。 わたしは、潔癖症ではない。 ただ、「現金」に触ると人間の「欲」を感じる様になったのだ。 だから、わたしは給料が入ったら、3万円だけ残し、 「電子マネー」 「定期預金」 「プリペイドカード」にワザとチャージする。 とにかく、【現金】をみるのが嫌になった。 会社の同僚と「女子会」に行き「現金」が足りなくて、恥ずかしい思いもしたが、、、、 あのいつかの、「ホンモノの優しさを持った少年」  「毎日、とびきりの笑顔をくれる、ご老人」 いつも、支えてくれる最高の【仲間】 その対極に、「現金」がある。 私は、これからも現金をもたない。 おそらく、変わることはないだろう。 目標は、日本一、優しい介護が出来る人。 その為には、まだまだ、先は長い。 人の悩み、心の奥底はわからない。 だけど、自分が出来る優しさで、ご老人を包み込みたい。 それが、私の幸せ。     おじいちゃんの幸せ。     おばあちゃんの、しあわせ。 自分の怪我を考えず、助けた「少年」 私は、そうなりたい。 そう生きたい。 あの日みた、🌈がまた見ることが出来る為に。
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