運動会が楽しみ。だから雨が降って欲しかった

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「明日の天気予報です」 わたしはその言葉を聞くなり、洗い物をしている手を止め、テレビの前に飛んで行った。 小学生一年生の一人娘も食パンを齧るのをやめ、テレビの前に飛んでくる。 二人してゴクリと唾を飲み込んだ。 「今日は、関東を除いてはおおむね、晴れるでしょう。しかしながら、関東は、特に南部を中心に、夕方から翌朝にかけて雨の予報となっています」 わたしと娘はハイタッチを交わす。 「お母さん、雨だよ、雨!」 「そうだね、雨だね!」 二人して抱き合い、喜びを分かち合う。 明日はこの子が初めて迎える小学校の運動会だった。だから、是非とも雨が降って欲しかった。 「いやあ、一昨日の天気予報までは曇りだけだったから、ドキドキしちゃったよね」 「だよね~」 「……って、早くパン食べちゃって! もう、仕事行く時間になっちゃうから!」 「は~い」 あくびをしながら、娘はまたパンを齧り始める。わたしの目からは到底早くない速度で食べ進める。 それを見て、少し苦笑してしまう。シングルマザーであるから、普段、この子の手本はわたしとなる。平日はとかくとしても、普段のわたしは食べるのが遅い。だから、似てしまっているのだろう。 最も、怒ったところで格別早くなるわけでもない。逆に喧嘩になって遅くなる可能性がある。わたしは自分の準備を進めることにした。 「仕事だ。仕事!」 今日の出勤は明日の天気を見たせいか、少しだけ気持ちが軽い。 わたしはベランダに下げてある、娘特製の逆さのてるてる坊主を小突いた。 「お前、やるなあ」 てるてる坊主が少しだけ笑った気がした。
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