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和也は今日も上機嫌だ。ビールを飲みながら夕飯が出てくるのを待っている。美知はおぼんに筑前煮と温泉卵を乗せて居間に運んだ。和也は言った。
「美知も天気予報をチェックしていたんだな。俺もだよ。土曜日は雨か曇りか分からないな。どっちにしても楽しみだ」
「そうだね。あ、ご飯とお味噌汁はもう持ってきてもいい?」
本当は水族館がいいのだが動物園を楽しみにしている夫にそんなこと言えない。
「もうちょっとビールを飲んでからがいいな。美知は食べちゃっていいぞ」
そうさせてもらおう。だらだらと食べているといつまでも片付かなくて寝る時間が削られる。
「パンダは並ぶかな?」
「うーん。やっぱり並ぶんじゃない。でも動物園だったらパンダは見なくちゃでしょう」
和也はスマホを指紋認証で立ち上げた。パンダの待ち時間を調べる。
「三十分くらい並ぶみたいだよ。思っていたより短いな」
美知は夫の可愛さに顔が綻んだ。雨よ、降れって思っていたけど動物園でもいいと思えてきた。パンダも小さいときに見たきりだし。
明日は金曜日だ。はっきりと土曜日の天気が分かるだろう。早く前売りチケットを買わなければいけない。
『M』で長野と待ち合わせをしてしまったが、いったい何の話があるのだろう。長野が買い物をして帰ったということは奥さんと喧嘩をしたか。いや、奥さんが病気になって寝込んでいることも有り得る。でも美知に何ができよう。
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