恋人編

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57.じゃあ、教えて◆ 「さわって、いい?」 「服の上からなら。……見ての通り小さくてごめんね」 「今更気にしないよ。それに、小さい方が大きい人よりメリットだらけだよ?」  私も巨乳の人ほどじゃないけどまあまああるから、異性同性問わずえっちな目線はすぐに分かってしまう。  こういうの、同性のほうが遠慮ないんだよね。わりとガチの嫉妬を向けられたり、勝手に揉んできたり、撮りやがったり、女同士なんだからいいじゃんってじろじろ見てきたり。  いくら可愛い子にされても不快なものは不快だ。  だから、正直紫苑が羨ましいまである。っていうと嫌味にしか聞こえないけど。 「くすぐったいときは言ってね」 「う、……っ」  そっと手のひらに包み込む。  外からでは分からない凹凸も、こうしてがっつり触れてみると柔らかさを感じ取ることができる。  少し指圧をこめると、むぎゅぎゅと押し殺した声が紫苑から上がってそのめっちゃ可愛い喘ぎなんやねんと奇声を上げそうになった。  揉めるほどはありそうなんだから、そこまでコンプレックスに思うことかなー。 「……てか、しーちゃん」 「な、に?」 「なぜにブラしてないの」  ブラ越しだったらもっとごわごわした感触だから、布一枚隔てた向こうにダイレクトに弾力が感じ取れることにびびる。  ちらっと胸元をのぞくとキャミしか見えなかった。  ……え、まさか普段もこうなの? 「小さいから必要ないと思って」 「ちょっっと……ちょ、ちょい。体育とかぽっち見えるよ駄目でしょつけないと」 「上はいつもジャージだから大丈夫」 「夏場とかぜったい死ぬやつなんでつけてください」  今度下着屋に行くことを約束して、ムードが消えかかっていたので軽く尖り始めていた胸元の突起を弾いた。 「ふぎゅう」 「つけてないと、こういうの分かっちゃうんですよ」  それまで無かった性器への刺激に、大きく紫苑の身体が震えた。  しばらく指の腹でくるくる尖りを撫でて、くっきりと存在を主張するようになった蕾をローションをまぶした指でぬたつく刺激を与えていく。  執拗な胸部への責め苦に悶えるように、唸る紫苑が両足をばたつかせた。 「しーちゃんの無自覚すけべ」 「んん……っ、ごめ、つぎ、ちゃんとする……っ」  ほとんど泣き声みたいな呻きで耐えているから心配になるけど、指を止めると大丈夫だからと頭をぶんぶん振られる。  心も身体も私を求めているんだってことがはっきり分かって、興奮を上回る嬉しみが湧き上がってきている。  楽しくなってきて、どんどん声が弾んでいく。 「どこまで欲しい? どこから触って欲しい? しーちゃんのしたいこと、なんでも言って」  矢継早に答えづらい質問を耳元でして、服の上から紫苑の下腹あたりに手のひらを添える。  くっとのけぞる紫苑の背中を支えるように背後に回って、軽くおへその下を押した。 「んぁ、うぅ」  どこから出ているのか分からない声が漏れて、紫苑が恥ずかしさからがばっと口元を覆う。  抑えてたほうが却っていやらしく聞こえるけど、する以上は聞かせてほしいので責めの姿勢はやめない。  おへその周りを円を描くように何度か撫で回すと、くぐもった喘ぎ声が震える紫苑から絞り出された。  ここってくすぐったいはずなんだけど、しっかり反応してくれてるあたり紫苑ってけっこう感じやすい子なんだろうか。 「あ、お声我慢しなくて結構ですよー」 「あうぅ」  邪魔な手を引き剥がすと、恨みがましく睨まれる。  顔は真っ赤に染まっていて、涙ににじんだ表情が凶悪なまでに可愛い。  構わず局部には触れず下腹やら腿やらさすっていると、涙声混じりに喘ぐ紫苑が呼びかけてきた。  太ももをすりあわせているあたり、すごく分かりやすい。  指をいったん止めて、震える紫苑の声を拾う。 「やめないで、ほしい、けど。こえ、すごく……恥ずかしい。……あの、泣いてるの、嫌とかじゃない、から。ごめん」 「どんな感情でも高まれば涙に行き着くもんだから、気にしない気にしない。人間だもの」  背中をさすって、鼻水とか垂れていたので鼻をかませて目元も軽く拭いてやる。  しゃくり上げる声が落ち着くまで待っていると、だいぶ声の調子が戻ってきた紫苑がさっきの質問に答えてくれた。 「さっきの……したいこと、だけど」 「うん。なんでも聞きますよ」 「その……お腹の下が、えっと、」  なんとなくその先に言いたいことは分かってるので、みなまで言わなくても大丈夫とさえぎる。紫苑、いちいち言い回しが厭らしいな。  初めてや不慣れの子が外部の刺激を性的快感までに変換するまでは難しいと聞いているから、愛撫は慎重にいかないといけない。 「下着の上からだったら大丈夫?」 「……うん」 「今日はそっとかするくらいに加減するから。痛かったらすぐに言って」 「がんばる」  頑張って、のエールを込めて唇を重ねる。  今はもう、キスは遠慮しない。  押し当てるのもそこそこに、下で好き勝手できないぶん上で思う存分ここで堪能することにする。  ずるりと舌を割り込ませると、紫苑も負けじと絡みついてきた。  厭らしい水音を立てながら、深い場所までふれあい、互いの熱に溶けていく。  息苦しいはずなのに獣じみた激しさが、局部には触れていないのに堪らなく気持ちいい。  唾液の糸を品もなくこぼしながら、吸い上げ、飽きもせず求め合う。  獣じみた愛も受け止めてもらえることが、こんなにも嬉しくて幸せなんて思いもしなかった。 「して……そろそろ、ほしい」 「いいよ。全部あげる」  お互い汗だくで息も絶え絶えになってきた頃に、私はようやく紫苑のほしがっていたものに応えることにした。  それからしばらくの間、恋人の甘美で愛おしい声が鼓膜を震わせ続けた。
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