妖精はそこにいる。

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 ***  三年生から始まった遊びは、四年生、五年生、六年生と続いた。  彼女と同じクラスになれたのは三年生の時と六年生の時だけだったが、お互い違うクラスでも休み時間のたびに互いの教室に行き、あるいは廊下で座り込んで駄弁ってはフェアリーワールドを広げ続けたのである。  物語はどんどん広がっていった。やがて始まったのが、いわゆる異世界転移――フェアリーワールドに普通の女の子が迷い込んでしまったら、どんな冒険をするのか?なんてお話である。そしてどのようなお話を作ったとしても、私達が最初に考えた妖精のフロマージュとセレスは話の中心にいたのだった。一番最初に作ったキャラクターは、お互い非常に思い入れがあったためだろう。  もっと言えば。最初に作った妖精たちは、どこか私達自身にも似ていたのだ。  当時、自慢ではないが私はそこそこ友達が多いタイプだった。  一番遊ぶ相手はりっちゃんだったけれど、りっちゃん以外にも友達がいた。オシャレで気取った女の子たちとは話が合わなかった反面、運動神経は悪くなかったので男の子たちのドッジボールに入れてもらったり、性別問わずの鬼ごっこ大会に参加させてもらったりなんてこともあったのである。  その反面、人に気を遣うのは苦手で、空気の読めない子供だったと思う。そして、男の子みたいなくだらない悪戯も大好きだった。まさに、フロマージュそのものだろう。まあ、彼女のように美少女ではないわけだが。  りっちゃんはといえば、物静かでどこかクール。私と友達になる前は、いつも教室で難しい本ばっかり読んでるタイプだったという。そして私以外に特に仲良しの友達がいる様子ではなかった。私と違って体育以外の学校の成績は優秀、いろんな係や委員会活動も極めて真面目。ただ、気を使いすぎて人と距離を置きがちで、それがちょっと誤解されることもあるタイプ。  まさに、私達は正反対のキャラクターで、だからこそ気が合ったとも言えるのだろう。  こういったシェアワールドのようなアイデアの世界においては、お互い見える世界が違うというのも重要な要素なのだ。真逆の視点を持つからこそ斬新で、いつも新しい発見がある。何年もこの遊びが続くのには、当然そういった理由があったのだ。
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