妖精はそこにいる。

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「フェアリーワールドに迷い込む女の子は、普通の小学生なんだよね。すっごく頭がいいとか、すっごく運動神経がいいとかじゃなくて。で、ちょっと寂しがり屋。……なら、すぐ家に帰りたいって思うかな、やっぱり」 「あたしもそう思うよ、マイちゃん」  私の言葉に、りっちゃんは頷いた。 「だって、人間が一人もいない世界なんだも、寂しいに決まってる。だから帰りたいけど帰れなくて、最初は泣いちゃうんじゃないかな……。そうだわ、じゃあその女の子を不憫に思って、フロマージュが声をかけてあげるのはどう?」 「ありだね!でも、フロマージュは悪戯好きだから、最初は悪戯しようとして近づくのかも。で、水ぶっかけたところで女の子が泣いているのに気づいて大慌てして……その罪滅ぼしもかねて、女の子の帰還を手伝ってあげるとか。フロマージュ、空気読めないキャラだし。……ああ、独りぼっちの女の子なら、セレスも同情しそうだよね」 「そうね。でもセレスは臆病だから、遠くから見守ってこっそり助けてあげるんじゃないかな。女の子が川を渡れなくて困ってたら、こっそり遠くから氷の魔法をかけて……氷の橋を作って助けてあげる、とか?」 「いいね、いいね!いやー、りっちゃんが一緒だとアイデアがどんどん出て楽しいねー!」  かつて、どこかのお話でこんなことを言っていた人がいた。セカイは、一人でも作ることはできる。でもセカイを広げるためには、二人以上のニンゲンが必要だと。二人以上の人間で分かち合うことでセカイを広げ、楽しむことができるようになるのだと。これはきっとシェアワールドに限った話ではないに違いない。  この頃の私達は親友であると同時に、同じ妖精の世界を作る創造主であり、同志でもあった。こんな関係がずっと続いていくはずだと、私達はそう信じていたのである。  中学校に上がるまでは。 「あの、マイちゃん。この間話してた、妖精の国のお城のことなんだけど、あたしね……」  私とりっちゃんは家も近いし、当然学区も同じ。だから中学校も引き続き、地元の公立校に行くことになったのだが。 「ごめん、りっちゃん!私今日部活あるんだわ。バレーボール部マジで忙しくてさ。また今度でいい?」 「あ……うん……」  中学生は、小学生と比べるとどうしても忙しい。中間テストや期末テストもさることながら、なんといっても毎日の部活が問題だ。
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