妖精はそこにいる。

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 週一でしか活動しない美術部に入ったりっちゃんと違い、私は土曜日まで部活があるバレーボール部に入部してしまった。朝練も放課後練もあり、そして部活でくたくたなので休み時間は突っ伏して寝ていることも少なくない。  同時に、中一で二人のクラスが分かれたのもよくなかった。私はすぐ、クラスに新しい友達ができて、彼女たちと話すことが増えてしまった。――りっちゃんと話す機会が減ってしまうのも、必然と言えば必然だったことだろう。  ただ、私としてはけしてりっちゃんとの関係を切ったつもりではなかったし、りっちゃんとのシェアワールドをやめたつもりでもなかった。もう少ししたら時間ができるから、もう少ししたら暇になるはずだから、そしたらまた物語の続きを作ろう――なんてことを、確かに私は思っていたはずだったのである。  それが、思いがけずに先延ばしになってしまっただけで。  夏休み前、ようやく一緒に遊ぶ時間を取れた時。レストランで自由帳を広げたりっちゃんは、私にぽつりと言ったのだった。 「……もう、やめよっか、フェアリーワールド」 「え」  突然、何を言い出すのだろう。唖然とする私にりっちゃんは続けた。 「最近思ってたの。マイちゃん、ものすごく忙しいでしょう?あたしのために時間使ってもらうの、申し訳ないなって。今日だって、本当はバレー部の活動で疲れてるし、お休みしたかったんじゃないの?」 「そ、そりゃ疲れてるけど。だからって、りっちゃんと遊ぶのがいやなわけないじゃん。私、イヤなことははっきりそう言うタイプだよ?りっちゃんが気にするようなことじゃ……」 「わかってる。でもあたしが嫌なのよ。りっちゃんに、いろいろ押し付けてるみたいで」  何で、突然そんなことを言うのか。  気遣いヘタな私でも段々と察してきた。ここのところずっと、彼女に冷たくしてしまっていたのではないかということに。 「……ごめん。私が、最近りっちゃんに塩対応だったせいだよね」  すると彼女は、きっかけはそれだけど、そういうわけじゃないの、と首を横に振った。 「ちょっとだけマイちゃんと、フェアリーワールドと距離を置いて気づいたの。あたし達、もう中学生じゃない?こういうの、恥ずかしいんじゃないかなって」 「え?恥ずかしいって……」
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