ブラッド×ホイップ ──狂気な関係。

7/11
前へ
/11ページ
次へ
 リラックスできる曲をかけて、鉄の椅子に座る〝羊〟を見る。  一回も染めたことのなさそうな黒髪、白い肌はさわり心地が良さそうで、引き締まった身体も実に好みだ。 「さて、始めようか」  黒革の目隠しは見えない恐怖を、鉄の棒を噛ませる猿轡は言葉を封じるため、鎖で椅子の背もたれに繋がれている首輪と手錠以外何も身に付けていない男は意識があるのか微かに震えてる。 「そんなに怖がることはないよ」  安心できるように優しく声を掛け、少し骨張った頬を撫でればビクリと身体が反応した。 「ぅん、ぅ」  まだなにもしていないのに怯えている姿に嗜虐心を擽られ、身動ぎするほど〝ケーキ〟特有の甘く蠱惑的な香りが強くなるのを感じ、思わず首筋に鼻を寄せて香りを楽しむ。  甘い、甘い〝ケーキ〟の香り。  蝶を、蟻を、〝フォーク〟を、魅了してやまない香り。 「あぁ、美味しそうだね」  美味しいだろう。  これからもっと美味しくするために、自分で下準備をするのだから、もっともっと美味しくなるだろう。 「君は、〝羊脚〟というものを知っているかな?まぁ、知らなくてもいいのだけど。これから君は僕に下準備されることを光栄に思うといい」  青ざめる商品の男の首に掛かったネームタグで名前を確認し、耳元で囁く。 「かわいいね、椿くん」  男の声に過敏に反応する姿は、仔兎のようで愛らしいと男は嗤い、八乙女の頭を撫でた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加