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5、レティシアフォレスト
焚火を始め、食事をしていた二人。すると馬車の中から眠っていた子どもが起きて近づいて来た。
「王女様?」
子どもの第一声は思いもよらないものだった。
「なんて言ったの?」
エリサは何気なく聞いた。
「あぁ……王女様って言ったのよ」
「言葉分かるんだ……」
「えぇ……」
子どもの言語が何も分からず、サリアに聞くしかなかったエリサ。サリアはその子どもの一言から頭の中で様々な情報が錯綜し、整理しきれず神妙な表情を浮かべた。
そして、サリアと子どもはそのまま会話を始め、エリサは話しを聞いてくれているサリアに感謝して、子どもの分の食事を用意して、食事しながら事情を聞くことにしてもらったのだった。
「それで、何か分かったの?」
二人の会話が一通り終わったのか、エリサの作ったホワイトシチューを中心とした献立を食べるのに集中し始めた子どもの姿を確認し、エリサはサリアに聞いた。
「大体と事情はね……ちょっと複雑だから覚悟して聞いてね」
「うん……お手柔らかにお願いします」
エリサはサリアの真剣な表情に威圧されながら、姿勢を正してサリアを見つめた。
「この子の名前はエミュ、レティシアフォレストからやってきた難民よ」
エリサはその言葉だけで衝撃を受けた。一筋縄ではいかないことがエリサにもよくわかったからだ。
「それだけじゃないわ、今のレティシアフォレストは階級が三階層に分かれているけど、この子が住んでいたのは最下層、つまり一部のヒューマンとライカンスロープの住む場所、そしてその子はライカンスロープよ。
証拠は二点、この大陸で黒い肌を持つ黒人のほとんどはライカンスロープであること、それともう一つ、腕に彫られた個体番号よ」
全く理解できない言葉の連続にエリサは目が点になって頭が真っ白になった。いくら自国の書庫に入り浸り、読書を続けて来たエリサでも、サリアが言った現実の世界の話しは到底エリサの知識で付いて行けるものではなかった。
「無理もないわね、ちゃんと今晩中に理解できるように説明してあげるから……そんなに固まっていないの」
これから始まる長い解説を理解してもらう憂鬱さを感じながらも、サリアはこれからの旅のためにもしっかり説明をしようと覚悟を決めた。
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