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1、砂塵の出会い
ダスカルタ王国の城下町で出会ったサリア・ダスカルタとエリサ・ベレスティー。二人は互いの秘密を共有し合い、王国を出て世界を旅する道を選んだ。
いつも乗馬をさせてくれる城下町の友人から二人は馬車を借り、ついに国を出た。
一面の砂漠を歩き続け二日目、砂漠を抜けるまで十キロを切った頃だった。
「子どもが倒れてるわ」
サリアが疲れを心配する愛馬に乗っていたところ、小さな子どもが俯けになって倒れているのを目撃した。日差しが強いのと砂煙が舞っており、視界は悪く、気付いたのは幸運ともいえるほどだった。
「本当だ、一人みたいだね」
サリアの言葉を聞き、急いで馬車の中から出て来たエリサは迷う様子もなく馬車を飛び降り、子どもの容体を確認するため日差しの強い砂漠を走り接近していった。
身体を起こして慎重に鼓動を確かめるエリサ、真剣な表情で腰に付けている水筒を手に持ち、子どもの口に水を含ませると、外傷のない様子でいとも簡単に子どもは息を吹き返した。
「こほっ! こほっ! こほっ!!」
どうやら脱水症状に陥っていたらしく、すぐに立ち上がろうとした。しかし、眩暈を起こしている様子もあり、一人でいる理由は分からなかったが、エリサとサリアは子どもを馬車に乗せた。
「この子、寝ちゃったの?」
馬の足を止め、馬車の中に入って来て膝枕をしてあげている白髪のエリサを見ながらサリアは言った。
元々、体格も大きくない十五歳の二人にとって馬車の中は休むには十分な広さだった。一番の問題と言えば馬の体調の方で、砂漠に適用している品種とはいえ、馬車を押す重労働はさすがに堪えるようで、休み休みの旅となっていた。
「一人で旅をしてたのかもしれないね、疲労が溜まってたんだと思う。すぐ寝ちゃったよ」
「一人で……ね、子どもが歩いてこの砂漠を越えるのは無茶だと思うんだけど」
「うん、とりあえず僕たちで保護して、砂漠を抜けよっか」
「そうね、トレント密林に入ったら自然のオアシスがあるって話だから、そこで子どもが起きるのを待ちましょう」
長い砂漠の道ももうじき終わる、そのことを事前に知っていた二人の決断は早かった。
子どもにとってはおそらく逆走することになるが、目的地が不明である以上、自分たちの順路を優先するのは自然な流れだった。
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