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2、安堵の景観
それから二時間ほど歩き、密林に入ると二人は安堵の表情を浮かべた。
あちこちに溜まった砂を払いたい気持ちもありながらグッと我慢してオアシスを探す。
樹木が生い茂り、鳥のさえずりや動物の鳴き声、虫の音まで聞こえ始め、二人の気持ちは一気に明るくなった。
「さっきの砂漠も遥か昔はこの森林の一部だったんだよね……」
しみじみと書庫で本を読み漁っていた知識を思い出しながら呟くエリサ、先程まで考え事に集中していたサリアも頷きながら口を開いた。
「自然の再生は難しいことだらけだから。ダスカルタでも研究と改良が続いてるけど、増加を始めた人口を食わせるだけの作物を栽培するのが今は精一杯よ」
国政を見て来た王家の人間らしく的確に言ったサリアの言葉もまた一つの真実だった。エリサはサリアの現実の厳しさを突き付けてくるような言葉に複雑な表情を浮かべたのだった。
シカや野鳥の姿もあり、自然の景色に目を輝かせながら見ているエリサ。
旅に出るまでシカリア王国の外にを出たことがなかっただけに、新鮮な反応を一々繰り返すエリサを見ながら、サリアは同い年だがお姉さんっぽく冷静に返事を返すことに務めていた。
(この子の肌……いや、確証はないけど、厄介なことになりそうね……)
すやすやと枕に頭を載せて眠る、肌の黒い子どもを見ながらサリアは先の展望を考え始めているのだった。
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