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ーデート前日。
「明日、どうしようか?」
「そうだなあ…」
今は、和くんの家で明日の記念日デートについて相談中。
ー和くんと付き合ってから、3回目の記念日デート。
今年も楽しみでどこに行こうか迷ってしまう。
和くんとの出逢いは、中学校。
仲良くなったきっかけは、クラスの親睦会の時だった。
たまたま座った席の隣が和くんだった。
そこから仲良くなり、気がついたらいつも私の隣にいてくれた。
そして、付き合い始めたのは、中学2年生の丁度6月の今頃。
和くんから告白されて、私も好きだったから即答で「私も好きです!」って答えたんだよね…
懐かしいな...
って、思い出に浸ってる場合じゃないっ!
明日のデートプランを考えないと!
「ん〜、じゃあ、今年は、隣町にでも行かない?」
「隣町?」
「大きいショッピングモールができたみたいなの!
そこでお揃いのもの買いに行かない?」
私の周りの友達カップルは、みんな彼氏とお揃いのものを持っている。
それに憧れて、私も持ちたいと思った。
私は、まだ和くんとお揃いのものを持っていないから。
「和くん、ダメ...かな?」
いつもなら「仕方ないな」なんて笑いながら言うのに、今日は何も言わない。
和くん...?
何も言わない和くんに不安を感じて、和くんの手に自分手を重ねる。
すると...
「ごめんな、雫」
そう言いながら、重ねていた手をソッとどかした。
….え?
か、ずくん?
和くんの急なその行動に顔をチラリと見る。
すると、今までにないくらい真剣な顔をしていた。
その顔にドクンと心臓が大きく鳴る。
何故か、嫌な予感がした。
「和、くん…、どうした、の?」
自分の紡いだ言葉が途切れ途切れになってしまう。
和くんは、大きく深呼吸をして口を開いた。
「雫、俺と別れてほしい。」
...っ、
どう、いうこと...?
….私、和くんに何かしてしまっただろうか。
いきなりのことで頭がついていかない。
なんで?
どうして?
その言葉が私の頭の中を占める。
スーハーと大きく息を吸って吐く。
『俺と別れてほしい。』
その言葉がもう一度頭の中でリピートされる。
何かが、私の中でガラガラと崩れ落ちた。
私は、震える声で和くんに聞く。
「どうして...っ?
私...っ、なにか、した...っ?」
そう聞くのに対して、和くんは一言だけ言った。
「.....ごめん」
ごめんって...
それだけじゃ、わからないよ...
「私、和くんのこと、好きだよ?」
こんな言葉を言っても意味がないのはわかってる。
でも、伝えたくなってしまう。
けれど、和くんの口から出てくるのはーー。
「...ごめんな、雫」
ーーこの言葉だけ。
それから和くんは、私が聞く言葉に対して全て「ごめんな」しか言わなかった。
もちろん、私と別れたい理由も言ってくれない。
和くん、
そんなに、私と別れたい...?
別れたい理由を言ってくれないほどにー。
和くんにとって、私との“恋”は、
そんな簡単に切れるものだったのー...?
ねぇ、和くん。
私は、この先、和くんのことを忘れるなんて無理だと思うんだ。
だからね?
「和くん…
別れるかわりに、私のお願い聞いてくれる?」
「ああ、それで雫が別れてくれるなら」
私の顔を見ずにそう言い捨てる和くんに、チクリと胸が痛んだ。
ぎゅっと手を拳に握り、和くんの顔を見て言った。
「私と、明日、記念日デートしてください。」
この記念日デートが終われば、
私は彼の“特別”では、なくなるー。
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