雨の恋

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* ー記念日デート当日。 毎朝、一緒に登校する時に待ち合わせをする公園で彼を待つ。 全てが、今日で“最後”。 彼の隣にいることも、彼に抱きしめてもらうのも、彼に支えられることもー。 ...泣かないようにしなきゃ。 そう強く思うと、無意識に唇を噛む。 「雫、唇を噛むなよ」 手をスッと伸ばし、私の唇を親指でなぞる。 それによって、唇を噛む力が弱まった。 「か...ず..くん…」 「女の子なんだから、ダメだろ?」 唇から血が出て、傷ができるぞと、最後に言葉を付け足した。 「...ご、めん」 「雫は、不安になるとすぐ唇を噛むよな」 「そう、かな?」 「ああ、噛むよ」 う〜ん、そんなことないんだけどな... 「雫」 「ん?」 「何が、不安なんだ?」 私の唇から手をゆっくりと離し、目線を合わせてくれる和くん。 目が合うとドクンと動いてしまう心臓の音。 ドキドキと鼓動が動く。 何が、不安かって? それを言ったら、和くんは私の傍にいてくれるー? そんなこと、ないでしょう? 期待をしてしまう自分が嫌になる。 「ううん、なんでもない! ねぇ、和くん」 「なに?」 「ここの公園でいっぱい過ごしたよね」 「ああ、そうだな。 ここで告白もしたもんな」 ここで告白をして。 毎朝、待ち合わせをして。 放課後はここでお喋りして… 和くんといろんなことをしたな。 春になると桜が咲き、 夏になると花火をして、 秋になると焼き芋を食べて、 冬には一緒に肉まんを半分ずっこした。 どれもいい思い出。 「でも、確実に雨が多かったよね〜」 「そうだな…。まあ、雫が雨女だから仕方ないな」 ケラケラと笑いながら私を見る。 ーそう。 私は雨女なのだ。 毎回デートすると8割の確率で雨が降ってしまう。 今もザーザーと降っているのがいい証拠。 「久々に私の家行かない? てるてる坊主作ろうよ!」 私の提案に和くんは「ああ」とだけ答え、私の家に向かう。 てるてる坊主。 『晴天を願い、白い布で作った人形を軒先に吊るすもの』のこと。 誰でも知っているてるてる坊主。 けれど、私と和くんのてるてる坊主は少し違う。 『白い布で作った人形を軒先に吊るす』という所は変わらない。 変わるのは、白い布の中に入れるものに少しだけ手を加えるということだけ。
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