雨の恋

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ー2年前の記念日デートのあの日。 和くんと別れた次の日、いつも通り学校に向かった。 ホームルームがはじまったにもかかわらず、 教室に和くんの姿はなかった。 クラスのみんなが不思議に思っていると、先生が話を始めた。 「彼は、家庭の事情で転校した」とー。 そのことに信じられなくて、私は教室を飛び出し、家に帰った。 どうしても確認しなきゃいけないことがあった。 それはーーてるてる坊主の中身。 和くんが時々、悲しそうにしていた顔や、 あの時、手を伸ばしたのに引っ込めた意味が もしかしから書かれているかもしれない。 そう、直感で思った。 家に帰り、バタバタと階段を駆け上がり、 自分の部屋に入る。 カーテンレールに吊るしていた和くんのてるてる坊主を開け、 中を確認する。 くしゃくしゃになっている紙を綺麗に広げる。 【雫へ 雫、別れるなんて言ってごめん。 実は、親の仕事の関係で海外で暮らすことになった。 俺は、それについて行く。 正直、いつ帰ってくるかなんて分からない。 1年後なのか、2年後なのか。 それとも10年後、20年後かもしれない。 雫を不安にさせたくなくて、雫と別れることを決めた。 ごめんな、傷つけて。 ごめんな、泣かせて。 雫、幸せになれよ。 和人より】 小さい紙だからか、短い文だった。 でも、和くんの別れを言い出した理由がわかった。 私だけが、辛い思いをしていたわけじゃなかった。 和くんも私と同じ気持ちだった。 それがわかった瞬間、凄く和くんに会いたくなった。 ー和くんに、会いたい。 和くんの大きな胸に飛び込んで、思いっきり抱きしめてほしい。 あれから和くんを忘れるなんて到底できなかった。 だって、また会えるかも…と淡い期待を持ってしまっているから。 私、何年…何十年でも待つよ? それくらい、和くんのことが好き。 和くんを思い出しながら、 靴箱に着いた私は、靴に履き替え、傘を広げる。 ザーザーと、今日も雨が降っている。 まるで、別れた日のようだ。
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