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ピアノのこえ
物心ついた頃から、気が付けば毎週木曜日に、学校が終わると歩いてピアノ教室に通っていた。
可愛いお花の刺繍がちりばめられている、お母さんの手作りの色鮮やかなトートバックに、五線譜のノートとバイエル、クーピ―12色をを入れて、ナシ園の横を重い足取りで歩く。
春も夏も秋も冬も、何年こうして来ただろう。
6歳になって、放課後は友達と遊ぶ約束をしていた。
それでも、ランドセルを玄関に置いて出て行こうとすると、山や川で飛び回って遊ぶ私には到底似合わないと思われる膝丈のフリルのついたジャンパースカートと半袖の真っ白なブラウスに着替えるように言われる。
ああそうか、今日は木曜日か、とそこでやっと気が付くのだ。
私が、お姫様のような日。
お姫様の振る舞いは大変だ。
照れくさいくらい慣れない、自分には不釣り合いな姿で、リボンを揺らす私は、本当は恥ずかしい。
だって、ちゃんと似合ってる?
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