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数日経つと、私は以前の様にまた笑える様になった。奇妙な病もいつの間にか治っていた。やはり、精神的なものだったらしい。客も順調に増えていた。姐さんたちからの嫌がらせは未だに続いていたが、女将さんに言ったら注意してくれたり、なによりそれらに対して何も感じていないことに気づいたお陰で心が軽くなり、ますます私の人気は上がっていった。これも全ては雪人様のお陰だなあと思いながら毎日を過ごした。
数ヶ月後、いつも故意にしてもらっている客から雪人様が結婚したことを知った。政略だと言うが雪人様は相手を大事にしているらしい。雪人様らしいなと思いながらも私は少しだけ相手が羨ましいと思った。何故だろうと思ったら、その答えは心の中にあった。ああ、私は雪人様が好きだったんだ。『恋』と言う言葉はストンと自然と落ちた。けど、まだ浅かったから良かったのかも知れない。私はそのまま客の相手をした。私はいつも通りだと思っていたが、客は違く思っていたらしい。それがわかったのは客が帰る時。昨日はいつもよりも激しかったね。と言われて、意外と失恋は厳しかったらしいと思った。けどそれだけだった。
一年後、私は身請けされた。相手は客のうちの1人。性格はとても優しくて気遣いのできる人だ。こんないい人なら婚約者くらいいても良さそうだけど、気弱すぎるとかで断れるんだとか。その意見には納得してしまった。だけど私にとっては好きな人でもあるのでそんなとこも好きだ。けど、彼は何処ぞの御曹司でいずれ会社を継ぐらしい。確かにこの性格では無理がありそうだ。私は正妻として迎え入れられるらしい。遊女で良いのかと聞いたら、息子が初めて興味を持った女らしく、誰でもいいと言われたんだとか。何じゃそりゃと思ったけど、まあいいかと思うことにした。教育は客の有無に関わらず勉強してたからなんとかなるはず。後は妻として支えればと考えている。最初にやる事は、勿論、あの心根を叩き直す事だけど。そういえば雪人様は子に恵まれ二男三女という大家族らしい。やる事はまだまだ山積みだけど、雪人様の様に幸せを築けたらと今はそれだけを祈ってる。
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