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ドン爺が渡してきた花から目を逸らせないでいた。 ソソが私に求婚してくれた時に渡してくれたヒヒンソウの花から。 “あの日”から枯れることなく咲き続けている強い強い強い、どごでも強いヒヒンソウの花から。 「ソソもきっと強く生き抜いているはずだ。 この人生を生き抜いて、次の人生でルルに求婚しに来るはずだ。」 「そうかな・・・。」 「俺が先に向こうに行って、ソソが来たらすぐにでも訓練してやるから安心しろ。 ルルへの求婚の仕方を訓練してやる。 こう見えても俺は昔モテたんだぞ?」 「うん、知ってるよ。」 「ルル。」 ドン爺がボヤけているはずの目で私のことを真っ直ぐと見てくる。 力強く見てくる。 「お前はインソルドの女だ。 ここに来た時お前は男だったが、お前はインソルドの女になった。」 「うん。」 「インソルドの人間はこの王国に生きる民の為に生きる。」 そう言われ・・・ そう言われて・・・。 「第3皇子と結婚するのが嫌なのは分かってる。 それでも全ては民の為に王宮に行ってこい。 第3王皇子に愛される為でもルルが第3皇子を愛す為でも2人で愛し合う為でもない。 サンクリア王国に生きる全ての民の為、その胸にヒヒンソウの刻印を持ってルルは王宮に行ってこい。」 ドン爺がそう言って、ソソから渡されたヒヒンソウの花を私の胸の真ん中に押し付けてきた。 それを見て・・・ それを聞いて・・・ 私は右手でそれを受け取った。 そんな私にドン爺が続ける。 「でも、ルルはインソルドの女である前にカルベル・ヒールズという人間でもあった。 そいつはソソの為だけに生きようとした強い強い人間だ。 そんな強い強い強い、どこまでも強い人間が聖女になった。」 ヒヒンソウの花をこの右手で持つ私にドン爺が言う。 「この王国の民の為の聖女は、国王になったソソの為の聖女でもある。 その命、聖女になった後もソソの為に使ってやれ。」 そう言われて・・・ そう言ってくれて・・・ 「うん・・・っ」 泣きながらヒヒンソウの花を握り締めた。
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