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「「花持ち?」」
ソソと声を合わせながら聞くと、クラスト陛下は面白そうに笑った。
それから膝をつき頭を下げているチチの方を見た。
「ダンドリー、何も説明してないのか?
娘の方にも?」
「はい。
ソソはインソルドにいた頃のソソではないだろうとクレドからの報告で判断しました。
なので娘には結婚相手のことについても自分の目と耳で調査してくるよう指示を出しています。」
「・・・昔から恋心が分からない奴だったが、相変わらず酷いもんだな。
クレド。」
「はい。」
「花の刻印が浮かび上がっているということは、血の刻印は結ばれ続けているということだろ?」
「僕もそう思ってはいたのですが・・・ソソにはよく抱き合ってる女の子がいると聞いていたのでね~。
小屋のあるあの空間で、ソソ誰と抱き合ってたの?」
クレドが聞くと、ソソは困った顔で笑いながら人差し指で差した。
自分の身体に抱き付きながらクラスト陛下に威嚇をしているエリーのことを。
魔獣の姿でも半獣の姿でもなく、人間の姿をしているエリーのことを。
「死んでしまったルルのことを想い苦しんでいる時、エリーはいつも現れた。
俺があの空間で自分で自分を殺そうとする時、エリーが現れていつもこの身体を使って止めに来た。
俺を抱き締めるエリーからはインソルドの匂いがして、そしてチチからの言葉をその時も嫌でも思い出してしまっていた。
強く強く強く、どこまでも強く生き抜く・・・最善を尽くすと。
俺はルルに会いたかったのに・・・早く次の人生で俺はルルに会いたかった・・・。」
ソソが困った顔で笑いながら威嚇を続けているエリーの身体を優しく抱き締めた。
「お前、喋れるんだろ?
自分が母親なこともルルが生きてることも俺に教えろよ。
そこは意志疎通だけでは通じないだろ。」
文句を言いながらも優しくエリーを抱き締めたソソのことを、クラスト陛下に威嚇しながら抱き締め続けるエリー。
「本当に・・・信じられないな・・・。
魔獣が元は人間であったという氷の国の研究結果を・・・。
この目で今見ているはずなのに、とてもではないが信じられない気持ちだ・・・。」
「僕は小さな頃にお父様が読んでくれていたロンタス王の歴史が好きでしたから、すんなりと入ってきましたよ。
真っ白な翼を持って現れた魔獣グースを、ロンタス王は兄の化身だと言い続けていましたから。」
「「魔獣が元は人間・・・。」」
ソソとまた言葉が重なると、クラスト陛下はチチのことを見た。
「魔獣の出現が年々増えてきていただろ。」
「はい、クレドから報告を受けていた通り、年々増え続けていました。
ソソには例年と変わらないと報告していましたが、国が傾けば魔獣が増える、その通りでした。」
「国に何かしらの強い感情を持ったまま死んでいった人間の魂が魔獣に入っている可能性が高い。
氷の国での研究結果はそのようなものだった。」
「王都を目指し王族を、国王を殺そうとする。
国に強い憎しみを持ったまま死んでいった民の魂が魔獣に入っているのでしょう。
国王が不在で傾いていく国、その国に強い憎しみを持って死んでいった多くの民。
1年前の魔獣の大群によりまた多くの民が死んでいきました。
アデルの砦の向こう側に追いやられた民達が。」
「先程あったクレハの群れはその民達の魂かもしれないな。
長い年月民を苦しませ、その挙げ句に見殺しにしてしまった俺の責任だ。」
「いえ、俺の責任です。
10歳で王宮に戻したソソの元に、俺の娘をもっと早く向かわせているべきでした。
例えルルは子作りが出来なかったとしても、ソソが他の女とも子作りが出来なかったとしても、戦友として、この国の上に立つべきソソと並んで立てるであろう娘に昔から育っていました。」
チチが頭を下げ続けながらそう言うと、クラスト陛下は小さく笑った。
「そうしていたら、この娘の花が咲くことはなかっただろうがな。」
クラスト陛下が細すぎる手をゆっくりと上げ、私のことを・・・私の胸の真ん中を人差し指で差してきた。
「最善の判断が出来なかった愚王である俺が傾けた国に現れた聖女。
黒髪持ちで生まれたがロンタス王と同じ魔獣持ち、それだけでは足りないであろうハンデがあるステルの元に咲いたヒヒンソウの花。
黒髪持ちの皇子を国王にする為、民を納得させる術を探しに各国を回っていたが、俺の調査よりもヒヒンソウの花1本の方が遥かに強かったようだな。」
クラスト陛下の人差し指の指先、ガタガタと震えている指先を見詰めていた時・・・
「それで、探してくることが出来たの?
黒髪持ちの皇子が国王になったとしても民を納得させる術を。」
ミランダが物凄く怒った顔でクラスト陛下の元にゆっくりと歩いてきた。
カルティーヌside............
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