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聞いた私にステル殿下は冷たすぎる顔で私のことを見下ろし続ける。
そして、綺麗な形の唇をゆっくりと開いた。
「キミは?」
結婚式が終わり正式に結婚をした私のことをステル殿下が“キミ”と呼ぶ。
「キミは俺との子どもだったとしても大丈夫なのか?」
そう聞かれてしまって・・・
「ステル殿下が大丈夫なのであれば・・・。」
そう答えると、ステル殿下は無表情なまま私の胸の真ん中に指先で触れた。
それにより無意識に身体が小さく跳ねる。
そしたら、ステル殿下が苦しそうな顔で小さく笑いながら私の胸の真ん中に浮かび上がっているヒヒンソウの刻印を見詰めた。
「こんなもの、現れなければよかったのにな。」
さっきの私の言葉が聞こえていたのか、そうステル殿下からも言われてしまって・・・。
「手短に終わらせるから、少しだけ辛抱していろ。
・・・処女だとは聞いているがその刻印のせいで処女膜まで再生されている可能性もある。
これまでに性行為の経験は?」
「ありません。」
「子どもが1人でも出来たら二度とキミには触らない。
だからそれまで辛抱してくれ。」
そう言われ、私は両手を握り締めた。
右手がジンジンと傷んだけれど、この胸の痛みの方がずっと痛いと思った。
「目を閉じていろ。
俺の姿は見ない方がいい。」
「はい。」
言われた通りに目を閉じた。
「見たくない物は見なければいい。
そうすればすぐに終わる。
きっとこの人生はすぐに終わる。
だから少しだけ辛抱していろ。
次はきっとキミにとって良い人生になる。
なんといっても聖女様の次の人生だからな。」
ステル殿下がそう言って・・・。
そんなことを言ってきて・・・。
私は思いっきりこの両目を開いた。
そしたら、悲しそうな顔をしているステル殿下の顔が私の目の前にあった。
「私は没落貴族の娘なのでそんな女々しい考え方が出来るような女に育てられていません。
強く強く強く、どこまでも強く生き抜くことしか教わっていません。
聖女としてステル殿下と結婚することになってしまったこの人生でも私は強く生き抜くつもりなので、ステル殿下のそのお言葉は聞かなくてもいいですか?」
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