雨の日のラーメン

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「おかしくない?」  雨の日のインスタントラーメンの話を楽しかった話としてクラスメイトのサヤカちゃんにしたらサヤカちゃんは渋い顔をする。 「料理できなくても何かしらできるでしょ? せっかくのお休みにインスタントラーメンって何?」 「いや。お母さん忙しいから……」 「そんなの理由にならないでしょ? 虐待じゃないの?」  私はただお休みで楽しかった話をしたかっただけなのにサヤカちゃんは深刻な顔をする。 「先生に言うね」  虐待とかじゃないのにサヤカちゃんは、そのまま職員室まで私の手を引いて担任のアヤ先生の前に引き立てた。  私が黙っているとサヤカちゃんは先生にまくし立てる。 「アヤ先生、おかしくないですか? お休みにインスタントラーメンしか作らない親なんて!」  アヤ先生はずれた眼鏡をクイッとあげて私の顔を覗く。 「ミユさんは虐待だと思っているの?」 「虐待なんかじゃありません! お母さんは料理が苦手だからインスタントラーメンを作ってるだけです! それの何がいけないんですか! 私が楽しくお母さんとインスタントラーメン作っちゃいけないんですか!」 「でも!」  サヤカちゃんが叫んだ。アヤ先生はパンッと手を叩く。 「サヤカさん、サヤカさんはインスタントラーメンを食べたりしないんですか? サヤカさんのご両親が忙しいときとかインスタントラーメンを食べたりしませんか?」 「そうだけど……お休みのたびにインスタントラーメンなんて!」 「そうかな? インスタント食品や冷凍食品、先生も好きだし先生のお母さんも先生が小さいとき沢山作ってくれたよ。インスタントばかりだから愛情がない訳じゃないのよ? ミユさんのお母さんだって手間をかけられるならちゃんと作っているはずです。ミユさん、お母さんがお休みの日は他に何してるの?」 「掃除して洗濯して仕事道具の手入れして草刈りとか買い物もして……」 「それはお母さん一人でしているの?」 「私も手伝うけど、大体お母さん一人です……」 「サヤカさん、サヤカさんのお家はどう?」 「お母さんもお父さんもやるけど……」 「それは大変かな?」  アヤ先生に問われてサヤカちゃんは下を向いた。 「大変だと思います……」  私は下唇を噛む。気にしないようにはしているけど、私にはお父さんがいない。おばあちゃんはあくまで私の世話のために来ている。一緒に住んでいる訳でもないから、うちはお母さんの負担が大きい。アヤ先生の言い分は分かるけど悲しかった。 「ミユちゃん……ごめんなさい……」 「いいよ……」  お母さんと私に何かが欠けているとは思わないけど他人は違う。持っている人はない人を無意識に高みから眺めているんだ。サヤカちゃんもアヤ先生も。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!