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花の美しい季節でもあり、内々の会ということで、庭に面する広いテラスと芝生の庭に会場が設えてあった。
「まあ、涼雅くんと櫻子さん、いらっしゃい。」
「お招きにあずかり、ありがとうございます。」
笹岡夫妻と留学から帰ってきた息子の久史に二人は迎えられた。
涼雅のあいさつに続き、櫻子も優雅にお辞儀をした。
「涼雅くんと息子の久史は幼馴染なのよね。また仲良くしてちょうだいね。」
久史は涼雅と握手をし、櫻子に朗らかな笑顔を向けた。
「涼雅、久しぶりだな。櫻子さんは初めまして。噂よりもずっとお美しいですね。それにやはり振袖姿はいいね。
ささやかだが楽しんでくださいね。」
「ああ、久史。イギリスの話を聞かせてくれ。」
二人の後ろについて奥の席に進んでいると、後ろから声をかけられた。
「まあ、櫻子さまでは? お久しぶりです。」
振り向くと、そこには美香子と光が立っていた。
光は表情が読めない黒い瞳で櫻子をじっと見ていた。
こんなところで会うとは。
息が詰まりそうになり一歩後ずさると涼雅に体を支えられた。
「これは……佐伯美香子さま、ご機嫌麗しゅう。そういえば美香子様と久史は従兄弟同士でしたか。」
その言葉に櫻子は涼雅をちらりと見る。
「鷹塔さまも、おかわりなく。……あ、櫻子さまはご存知ですよね、木野光さまです。今日は私のパートナーとして同行してくださったの。」
「……ええ、父の元で働いていると聞いています。」
「僕も夜会でお見かけしたことはありますが、話すのは初めてですね、木野殿。」
「木野光と申します。お見知りおきを、鷹塔さま。」
二人が軽く握手をするのをぼんやりと見ていると、涼雅がぐっと櫻子の腰を抱いて引き寄せた。
「櫻子の未来の夫として、仕事で関わることもあるでしょう。こちらこそ親しくしていただければありがたい。
今、社交界で一番の話題の方ですし。
ね、櫻子。」
「ええ、そうですわね。」
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