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そしてまた女学校と葉室による教育と、涼雅とともに茶会や晩餐会に出席するなど日常が戻ってきたが、とりあえず何事もなく過ぎていった。
夜会でたまに光が美香子をエスコートしているのを見かけて胸がぐっと苦しくなるが、涼雅の手前それは表に出さないように気をつけた。
あの時の光の笑顔を思い出せば多少のことは耐えられるのだ。
結納や結婚を忘れてはいない。それは割り切って考えなくてはならないと思っている。
わたくしは涼雅さまと結婚する。
涼雅に対して罪悪感も感じている。涼雅は逆鱗に触れさえしなければ優しくて申し分のない男性だ。
だが違うのだ。
子供の頃から一緒に育った涼雅に、光に対するのと同じような気持ちが湧かない。結婚すればきっとほかの華族の夫婦と同じように過ごすことはできるだろう。
だからそれまで、だからこそ、慎重に行動しなければならない。
毎日の手紙も書いている。光からの返事はないが、読んでもらえているとわかってからは書くのが楽しくて仕方がない。
二週間ほどあずまやに行っても光に会えないことが続いた。水曜日もやはり光の姿はなく、仕事ならば仕方がないと諦めた。
寂しさが募ったそんなある日、あずまやの椅子の上に紙で折った花が置いてあるのに気がついた。
光が作ったのだろうか。赤い紙でリンドウの花が折ったものが置いてあった。櫻子は大切な宝石を持つように両手に持ち、自室に持ち帰った。
本棚から花言葉の本を取り出してリンドウを調べた櫻子は、心が震えるのを覚えた。
そしてドレッサーの引き出しに収め、折に触れ取り出しては眺めた。
リンドウの花言葉は『悲しむあなたを愛する』、赤いリンドウの花言葉は『愛らしい』。
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