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見られている倫も、怜士から目を離せなかった。
少し長めの、緩やかなウェーブがかかった黒髪。
目鼻立ちのハッキリした、凛々しい顔つき。
そして、ただのイケメンとは違う高貴さを、その身にまとっている。
倫もまた、ひと目で怜士に魅了されていた。
やがて怜士は、倫から少し視線を逸らし、言った。
「君は。絵から、抜け出してきたのか?」
「え!?」
それほどまでに、怜士の見た倫は美しかった。
嚙み合わない会話に、傍の和生がくすくす笑う。
「まあ、いい。登壇を許す。ミントを、ここへ」
「は、はい!」
倫は和生と共にテラスへと上がると、ミントが入ったバスケットをテーブルに置いた。
そのフレッシュな香りを、怜士は深く吸った。
身が清められるような、心地だ。
「和生。このミントを使って、お茶を淹れてくれ」
「かしこまりました」
ミントを水洗いするために、和生は倫を置いて、いったんその場を離れた。
途端に心細くなった倫が、もじもじしていると、怜士はもう一度彼に視線を寄こした。
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