第二章 出会い

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「相羽 倫、と言ったな」 「はい」 「相羽という姓には、聞き覚えがある」  そこで怜士は、再び瞼を伏せた。  そして、ささやいた。 「確か、相羽という男爵が、最近失脚したはずだ」  倫がすぐ傍にいるというのに、それは独り言のようだった。 「地方の小さな都市を任されていたが、銀行との癒着が発覚した。そして、収賄罪に問われ、爵位を剝奪された」  返事を求められている風でもないので、倫はただそのささやきに耳を傾けた。 「しかし。彼は市民からの信頼厚い、実直で真面目な人間だったはず。金に目が眩んで、道を踏み外すような男とは思えないが……」  一言も聞き漏らすまいと耳をそば立てる倫に、記憶を呼び覚ます男の名が告げられた。 「そして。相羽を糾弾したのは、私の実弟・北白川 丈士(きたしらかわ たけし)だ……」  怜士の弟・丈士の名を、倫は思い出した。 (北白川 丈士。確か、怜士さまを敵視している悪役だったはず!)  倫は、ひどく落ち着かなくなってきた。
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