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「……さま。怜士さま!」
「ん? ああ、和生か」
「お茶の支度が整いました」
傍の倫を放っておいて、独り言と深い物思いに沈んでいた怜士に、和生は肩をすくめて見せた。
「また、難しいことをお考えに?」
「いや、何でもない」
和生の淹れたミントティーのカップを手に、怜士は倫の方を見た。
「倫、ここへ掛けたまえ。お茶のお供になってもらおう」
「え!? いいんですか!?」
何せ、さっきまで草むしりの身分だったのだ。
高貴な怜士の隣に座ることは、ためらわれた。
とっさに和生を見たが、彼も目を円くしている。
しかし、すぐに微笑むと、倫に向かってうなずいた。
「で、では。失礼します」
怜士と倫。
二人の軌道が交わった瞬間だった。
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