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「では、倫くん。その蜂蜜が何かは解るかい?」
重い空気を少しでも和らげようと、和生が倫にいたずらっぽく尋ねてきた。
それには怜士も興味を惹かれたらしく、倫を見る。
倫は緊張しながらも、思ったことを素直に口にした。
「多分、ですが。アカシアかな、と思います」
そのとおり、と和生が明るい声を上げた。
「よく解ったね。どうして?」
「僕の母もハーブが好きで。よく、蜂蜜入りのハーブティーを淹れてくれたんです」
それと、同じ味がしたからです。
鋭敏な味覚や、深い洞察力は無いのだ、と倫は自分を謙遜した。
しかし、そんな倫の反応は怜士を喜ばせたようだ。
「いい答えだ。気に入った」
そう言う怜士の目が、倫を見つめた。
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