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怜士に見られて、倫は思わず目を逸らそうとした。
しかし、彼の眼力には抗いがたい魅力があった。
大人しく見つめられるまま待っていると、怜士は語り掛けてきた。
「私の傍で共にお茶を飲んで、沈黙を大切に扱ってくれる者は少ない」
「そうなんですね」
「皆、次第に飽きて。そして、何やかやと話しかけたりするものだ」
「そうですか」
だが君は違う、と怜士はそこで言葉を切って、お茶を飲んだ。
(僕、昔読んだ小説の内容を、必死で思い出そうとしてただけなんだけどな)
好意的に受け取ってくれた怜士に、少し申し訳ない気持ちになった時、怜士は和生に顔を向けた。
「和生。倫は、君のハーブガーデンで働く予定だ、と言ったな」
「はい、怜士さま」
「では。10時のティータイムになったら、彼を借りてもいいだろうか」
「喜んで」
二人の大人が、勝手に自分のスケジュールを決めてしまう。
そんなシーンに倫は慌てた。
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