第一章 ふと覚めてみると

2/6
前へ
/180ページ
次へ
 倫は、18歳の少年だ。  個人経営の商店を営んでいる父を、早く手伝いたいと、商業高校へと進んだ。  小さいが、地域に根差した代々の店を、父は誇りに思っていたし、倫もそんな父を尊敬していた。  しかし、倫が高校に入学した年に、付近に大きな総合スーパーがオープンしたのだ。  父の店は、たちまちのうちに客を奪われ、苦境に立たされた。 「あちらさんは品数も多いし、駐車場も広い。うちは、いつまで持つかな……」 「父さん。僕が卒業したら、一緒に働くから。だから、頑張ろうよ」  父は借金までして経営を続けていたが、無理は心身を蝕み、突然その命を奪った。  倫が、16歳の時だった。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

332人が本棚に入れています
本棚に追加