337人が本棚に入れています
本棚に追加
息を切らせて笑顔を見せる倫に、怜士は少し首を傾げた。
「人に散歩と言いながら、君はどうした? 午後の仕事は無いのか?」
「はい。勤務は明日からです。今日はここに慣れるために、和生さんに案内してもらっています」
「なるほど」
そして、沈黙。
静かに目をつむり、しばし考えていた風の怜士だったが、瞼を開いた後こう言った。
「では。今日は肉体労働が、無いのだな?」
「えっ? は、はい」
「疲れるようなことは、無いのだな?」
「はい……」
解った、というようにうなずいた怜士は、倫を正面から見据えた。
「ならば今夜、私の寝室へ来るように」
「ええっ!?」
倫は、慌てた。
初体験はまだだが、怜士の言わんとすることは解る。
(つまり。怜士さまは今夜、僕とエッチしたい、ってこと!?)
それだけ告げると、怜士はバラ園の方へと向き直って歩き始めた。
慌てて、従者がついて行く。
倫はあまりのショックに、その場に立ち尽くしていた。
「どうしたの? 怜士さまに、ご挨拶はできた?」
追いついて来た和生に、倫は震える声で訴えた。
「あの、その、怜士さまが。今夜、僕に寝室へ来なさい、って!」
「え!? それは、その。……おめでとう」
「そんなぁ!」
とんでもない事になっちゃった!
倫はただ、うろたえるしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!