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第五章 意外な目的
優しくて頼りになるお兄さんの和生が、怜士をたしなめてくれることを期待した、倫。
しかしそのお兄さんは、いそいそと彼を上から下まで丁寧に洗い上げ磨き上げた。
「和生さん。反対してくれないんですか? 怜士さまを、止めてくれないんですか!?」
「倫くん。もしこのまま怜士さまの御寵愛を受けることになったら、大出世だよ?」
玉の輿だ、と和生は言うのだ。
だが、手放しで喜んでいる、といった風ではない。
「怜士さまはこれまで何人も、美しい人間をお傍に置き愛でられたんだ。でも……」
成婚に至るまでには、関係は深まらなかったのだ。
「倫くんなら、その壁を突破できるかもしれない!」
「僕はまだ、結婚したくはありませんよぅ!」
わぁわぁと言い合っているうちに、倫の洗い髪は乾いてしまった。
和生は手にしたドライヤーをホルダーに掛け、後は手櫛で整えた。
「ま、今夜すぐにベッドイン、というわけではないかも。成り行きに任せなよ」
「生々しい……。僕、初めてなんですけど?」
「それも、怜士さまにお任せしなさい」
そして、倫の肩を和生はポンと叩いた。
「さあ、行こう。怜士さまの所に、案内するよ」
「気が進まないな……」
すっかり暗くなった外に、二人は出た。
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