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レンガで仕切られた花壇に繁る、様々な種類のハーブたち。
広い、たくさんの花壇で、大勢の人々が作業をしている。
土に片膝をつき、ていねいにアップルミントの葉を摘む、一人の男。
彼に、倫を連れて来た男は声を掛けた。
「おい、和生(かずお)。新入りを頼む」
「ん?」
和生と呼ばれた男は顔を上げ、倫を見て目を円くした。
「これはこれは。やけに可愛らしい子を、連れてきたね」
「多分、没落貴族のお坊ちゃんだ。名字を持ってやがる」
和生は立ち上がると、ひょろりと高い背丈だった。
長い手足に、長い黒髪。
その髪は後ろに流して一つに束ね、後れ毛が少し汗で首筋に張り付いていた。
「私は、このハーブガーデンの園長だよ。和生というんだ、よろしくね」
「僕は、相羽 倫です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた倫の仕草が、和生は気に入ったらしい。
礼儀正しい子だ、と笑顔になった。
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