第二章 出会い

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(でも、やっぱりただの夢かもしれないし)  そんな思いは、捨てきれないでいる倫だ。  それでも、もう少しこの夢の世界に浸っていたい。  そうも、考えていた。  目を覚ませば、両親の眠る冷たい墓標の前なのだ。  温かな家庭には、もう戻れない。  孤独で辛い日々が、待ち受けているに違いない。  だったら、目が覚めるまで、この世界を冒険してみたい。  こんな思いが、倫の足を前へ歩ませていた。 「ほら。あそこにいらっしゃるのが、怜士さまだよ」  和生が手のひらで示して見せた方には、開放的なテラスが広がっていた。  日よけに、洒落たハンギングパラソルが立ててあり、その影に憩う男性が見える。  遠目にも、アルファらしい体格のいい人だと、倫には解った。  北白川 怜士のビジュアルを、彼は知らない。  大人向けの小説だったので、挿画は最小限にとどめられていたし、それもデザイン的でモノクロだった。  だが怜士は、倫の好きなカッコいいキャラクターだったことは確かだ。 「気難しくて、厳しい方だけど。その心根はお優しいと、私は思っているよ」 「そうなんですね」  胸を高鳴らせながら、倫は和生と共に、怜士に近づいていった。
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