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「おはようございます、怜士さま」
テラスには上がらず、離れた低いところから、和生は怜士に挨拶をした。
「……」
瞼を伏せて頬杖をついている怜士は、微動だにしないまま、少し間をおいて口を開いた。
「……もう、10時だ」
「お茶を楽しんでおられますね。よろしければ、これを」
和生は倫が抱えたバスケットを、指した。
「摘みたての、アップルミントです」
「……」
怜士はやはり物憂げに、視線だけを倫の方へ寄こした。
そして彼の姿を見ると、少し顔を浮かせた。
「見ない顔だな」
「彼は、新入りです。今後、ハーブガーデンで働く予定です」
目を開いてこちらを見た怜士に、倫は背筋を伸ばした。
「初めまして、相羽 倫です。よろしくお願いします」
表情には出さなかったが、怜士は倫の姿に一目で惹かれた。
自然と頬杖を解いて顔を上げ、じっと見つめた。
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