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だから、昨夜は売り言葉に買い言葉。
つい隠し持ってた本音が出ちゃったんだ。
「綾は、私ばっかりって言うけどさ、掃除機かけたり洗面所の髪の毛コロコロするの俺だからね…ボディーソープの詰め替えだって、綾がポチった通販の段ボール開けて畳むのだっていつも俺じゃん!」
綾は思いがけない反撃をくらって、顔を赤くして今にも泣き出しそうな顔をした。
綾の顔を見て、俺はハッとした。
あーやっちゃったな…
覆水盆に返らずとは、こういう時に使うのか…
少しの沈黙の後に綾が口を開いた。
「…掃除機だって、コロコロだって、ちょっとくらいサボったって死なないじゃん!ボディーソープはそろそろと思ったら、先にやっちゃうからだし、ダンボールは休みの日にいっぺんに開けるもん!」
それだけ言って、綾は寝室に篭ってしまった。
言い過ぎたかなと思ったけど、間違ったことは言っていない。
・・・悔しいが言われたことも間違っていない。
モヤモヤとした感情が腹の底にたまって、素直に謝る気にはなれなかった。
今、また口をきけば、さらにヒートアップして収拾つかなくなるかもしれない。
それくらい、お互いにため込んだものがあるのだ。
頭を冷やす時間が必要だと思った。
だから、俺の昨夜の寝床は、リビングの固いソファーだった。
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